NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

児玉 武子 さん

  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構(→花王株式会社)
  • 1996年度(修士) システム細胞学
児玉 武子さんの近況写真

私は、1995年に二期生として入学し、小笠原研究室に修士課程の2年間お世話になりました。研究室配属当時、ゲノム研究のトップランナーである枯草菌(Bacillus subtilis)のゲノム全塩基配列決定が大詰め段階であり、ゲノム全塩基配列から新たに見出された遺伝子のシステマティックな機能解析プロジェクトの準備が進められていました。私は、1つのオペロンを形成している複数の遺伝子の機能解析に携わることが出来ました。

現在は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の産学協同プロジェクト(微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発)に携わり、信州大学繊維学部で研究をしています。奈良先端大以来の縁があり枯草菌を扱っています。枯草菌は分泌能力が高く、アミラーゼやプロテアーゼなどの生産菌として工業的に利用されています。従来、タンパク質分泌生産能力が高い菌株は、突然変異等の遺伝学的手法により選抜育種されるのが主流でした。一方、枯草菌ゲノム全塩基配列決定されたことから、枯草菌ゲノム研究が加速度的に進み、細胞の生存に必要不可欠な遺伝子群や、機能未知遺伝子の機能解明、分泌システムなどの有益な情報が次々報告されました。これら情報を基に、生育に必須な遺伝子を残し、異種タンパク質の分泌生産に不要な遺伝子群を欠失させ、必要な遺伝子群を導入・強化する等、枯草菌をゲノムレベルで大幅に改良し、有用タンパク質を効率的に生産できる枯草菌宿主を創製することを目的した、研究開発プロジェクトです。このような既存の枠を超えた、新たなゲノム研究に携わっています。

奈良先端大は最新の研究設備や国内外の著名な研究者のセミナーなどから得られる生の情報量が多いこと、また世界を視野に据えた研究内容など研究のレベルが高いことを、直接見学に来ていただけたら実感していただけると思います。それらのことに加えて、同期や研究室の先輩・後輩、そしてスタッフの方々に出会えたことが私のターニングポイントとなりました。向上心の高い、純粋にサイエンスが好きな仲間に恵まれ、お互いの研究テーマや実験的なアプローチなどを話したり、時にはスポーツや飲み会、旅行などで交流を深めることで、研究や価値観に関しても視野が広がり良い刺激を受けました。奈良先端大を巣立って10年が過ぎましたが、学会やメールなどで同期の友人や奈良先端大卒業生の活躍を聞く機会が多く、NAIST遺伝子のネットワークは着実に拡がっています。

スタッフの方々が未熟な私を時には見守り、時には根気強く指導してくださる中で、実験技術以外に研究を進めていく上で、考え方、粘り強さが重要だということを学びました。そしてまた“研究を楽しむ”気持ちを育てていただいたと思います。この“研究を楽しむ”ことが、卒業以降、研究に携わる私の原動力になっており、経験を重ねていくうえでの礎になっています。

【2008年01月掲載】

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