NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

阪本 薫 (さかもと かおる)さん

  • 大関株式会社 総合研究所 バイオサイエンスグループ
  • 2018年度(修士) 植物発生シグナル研究室

奈良先端大での経験と現在の研究生活

阪本 薫さんの近況写真

私は現在、日本酒メーカーの研究所に所属しており、主に「麹菌によるタンパク質受託発現サービス」に携わっています。仕事内容としては、顧客から麹菌に生産させたいタンパク質の依頼を受け、目的タンパク質を大量に生産できる麹菌の育種を行い、納品する業務です。麹菌とはカビの一種であり、古くから日本酒・醤油・味噌などの発酵食品の製造に利用されてきました。近年、麹菌は食経験のある安全性が高い生物であること、多量のタンパク質を分泌する能力を持つことから、工業用酵素や食品加工用酵素などを生物に生産させる際の宿主として注目されています。弊社ではバイオ技術を駆使して麹菌によるタンパク質高発現システムを構築しており、徐々に成功事例も増えてきている状況です。しかし、中には発現させるのが難しいタンパク質も存在しており、どのような改良を加えれば高生産できるのかを日々考えながら過ごしています。

私が奈良先端大を選んだきっかけは「幅広い分野から興味のある研究テーマを選べること」と「研究設備が充実していること」、「奈良に住んでいたから」の3つです。在学中は植物発生シグナル研究室に所属しており、「根冠最外層の成熟と剥雛におけるオートファジーの役割」というテーマで研究に取り組んでいました(有難いことに2018年度の最優秀学生賞に選んでいただきました)。当時はシロイヌナズナの根冠組織が持つ不思議な現象と機能に魅了され、顕微鏡の前に何時間もかじり付いていたのを覚えています。当時の研究テーマは現在の仕事内容とは大きく異なっていましたが、先生方とテーマの進捗について共有し、ディスカッションを重ねる機会を多くいただいたことによって、課題解決とテーマの発展に向けたアプローチのコツを伝授いただいたように思います。現在の仕事内容である「麹菌によるタンパク質受託発現サービス」においても、解決すべき課題や更なる発展の余地が多く存在しますが、奈良先端大での研究生活で培った経験が分野を問わずに活きていることを実感しています。

奈良先端大の魅力の一つとして、最新の設備で研究できる点が挙げられるのですが、植物発生シグナル研究室には世界に数台しか存在しない、根の先端を伸長に合わせて追尾・記録し、タイムラプス動画として保存できる最新型の顕微鏡がありました。この顕微鏡でしか得られないデータが数多くあり、得られたデータも興味深いものばかりだったことから、奈良先端大の研究環境のおかげで非常に充実した研究生活を送ることができました。
また、恐らく多くの受験生と現役生が気になっている、就職に関することですが、奈良先端大では就職活動に対するサポート体制が非常に整っていたと記憶しています。学内にはキャリア支援室が存在し、エントリーシートの添削や進路のアドバイスはもちろん、就職活動に関連した書籍や案内資料が充実しており、大いに助けていただきました。他にも企業の採用担当者を呼び込んでの学内企業説明会や、就活生向けセミナーなども開催されており、申し分ないサポート体制であるかと思います。私自身、日本酒業界について深く知りたく、キャリア支援室を通じて日本酒業界で活躍されているOB・OGの方とコンタクトを取らせていただいたことで、希望する業界を固めることができました。

現在研究員として企業で勤める中で、改めて奈良先端大の研究環境を振り返ったときに羨ましいと思うことが多々あります。気になる方はぜひ一度オープンキャンパスに気軽に参加してみてはいかがでしょうか?「奈良の地にこんな研究設備があったのか!」ときっと驚くと思います。

 

【2023年03月掲載】

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