NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

齋藤大介助教が、(財)花王芸術・化学財団の平成21年度助成対象者に選ばれました

分子発生生物学講座の齋藤大介助教が、財団法人 花王芸術・化学財団の平成21年度科学技術研究助成対象者に選ばれました。本助成は「表面の科学」の〈化学・物理学分野〉と〈医学・生物学分野〉における独創的、先導的な研究あるいは基礎的、基盤的な研究をしている35歳以下の研究者を対象とするものです。

助成受託のコメント

我々は、血管ネットワーク形成がどのようなメカニズムによって制御されているかについて興味をもち、遺伝子および細胞レベルで研究をおこなってきました。今研究課題に対して本助成をいただくことができ、大変光栄に思っています。今後より一層気を引き締めて研究を進めていきたいと思っています。

助成受託研究テーマ

「血管発生における動脈サブタイプの決定とケモカインシグナル」

体の中を張り巡らされている血管ネットワークも、個体発生の過程では、まず単純な血管パターンが確立され、それを基盤として徐々に複雑な血管網ができあがります。しかしながら、 「しかるべき場所に、しかるべき大きさ(太さ)の血管が作られる」という、3次元的血管形成と空間配置のしくみはほとんどわかっておりません。

脊椎動物の胚では、まず最初に背側大動脈(太い)が形成され、次にそこから末梢部に向かって肋間動脈(細い)が伸展します。最近の私達の解析により、SDF1ケモカインシグナルが、背側大動脈と肋間血管というサブタイプの決定に重要な役割を担うという新しい知見が得られました。その証拠として、まず伸展中の肋間血管の周囲でSDF1が、そして血管内皮細胞でその受容体CXCR4がそれぞれ特異的に発現するということ(図1)。次にCXCR4のノックアウトマウスでは、肋間血管の重篤な異常がみられること(このとき背側大動脈は正常、図2)。加えて、我々が独自に開発した、胚内における血管内皮細胞特異的な操作法を用いて背側大動脈内にCXCR4を強制発現したところ、これらの血管が「肋間血管様」に変化したということです。そこで本助成研究では、これら独自の知見をさらに発展させ、ケモカインシグナルによる3次元血管サブタイプの決定機構を、血管内皮細胞の移動、伸展、接着機構などに注目して分子-細胞生物学的に解明することを目的としています。


図1 血管サブタイプの形成とCXCR4の発現


図2 CXCR4ノックアウトマウスにおける肋間血管の形成異常。赤くみえるのは肋骨(正常)。背側大動脈(中央部)は正常。

関連する論文
  1. Sato, Y. et al, Dev Cell 14, 890-901, 2008.
  2. Watanabe, T. et al, Dev Biol 305, 625-636, 2007.
  3. Sato, Y. et al, Dev Biol 305, 616-624, 2007.

(2009年04月24日掲載)

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