NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

過剰な神経軸索の形成を抑制するタンパク質Singar1の発見- J. Biol. Chem. 誌のPapers of the Weekに選定 -

神経細胞は1本の軸索と複数の樹状突起を有し神経極性を形成する。神経細胞が情報処理を行う上で、このように軸索を1本だけ持つということは重要である。それでは、神経細胞が発生の過程でどのようにして1本のみの軸索を形成しそれを維持することができるのだろうか?バイオサイエンス研究科・稲垣直之准教授らの研究グループは、高感度2次元電気泳動法を用いた大規模なプロテオーム解析により、極性形成に伴って神経細胞内での時間的・空間的な発現が変動するタンパク質群を解析し、その中に新規の脳特異タンパク質Single Axon Related (Singar)1を見出した。培養海馬神経細胞のSingar1をRNAiで発現抑制すると過剰な軸索が形成された(図)。また、Singar1を過剰に発現すると、正常な軸索形成には影響を与えず、Shootin1過剰発現による過剰軸索の形成が抑制された。このことから、Singar1の発現が神経細胞の過剰な軸索の形成を抑制して正常な神経回路の形成・維持に重要な役割を果たす可能性が示唆された。過剰軸索の形成を特異的に抑制するタンパク質が見つかったのは世界で初めてである。

この研究成果は、米国の専門誌であるJournal of Biological Chemistry誌の本年7月6日号で公表され、この号の「Papers of the Week」に選定されており(紹介記事: Singar1 Promotes Singular Axons. J Biol Chem 282, 99925, July 6, 2007)、Singar1の発現抑制によって過剰軸索を形成した神経細胞が表紙を飾った(図)


Singar1の発現抑制によって過剰軸索の形成したラット培養海馬神経細胞(赤;軸索マーカーTau1、緑;アクチン繊維、青;細胞質マーカー)

掲載論文

Mori, T., Wada, T., Suzuki, T., Kubota, Y., Inagaki, N. (2007) Singar1, a novel RUN domain-containing protein, suppresses formation of surplus axons for neuronal polarity. J. Biol. Chem. 282, 19884-19893.

(2007年07月01日掲載)

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