研究成果

研究成果

石田靖雅准教授の提案が、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」基盤技術整備プログラムに採択されました

平成19年度「ナショナルバイオリソースプロジェクト」基盤技術整備プログラム(文部科学省)の研究課題に、動物遺伝子機能学講座・石田靖雅准教授の提案が採択されました。同省では、ライフサイエンス研究の基礎・基盤となるバイオリソース(動物、植物等)について収集・保存・提供を行うとともに、バイオリソースの質の向上を目指した技術開発を促進するため、ナショナルバイオリソースプロジェクトを実施しています。

ナショナルバイオリソースプロジェクトのページ

受賞コメント

昨年より欧米では「ノックアウトマウス・プロジェクト」がスタートしました。これは、マウスの全遺伝子をES細胞レベルで(ランダムな挿入型変異導入法により)破壊し、作製されたおびただしい数のES細胞株を、広く無条件で研究者間に分配するものです。私たちが開発したNMD抑制に基づく遺伝子破壊法は、既に欧米の「ノックアウトマウス・プロジェクト」において好んで採用されています。今回、我が国でもナショナルバイオリソースプロジェクトの一環として推進されることになりましたので、ランダムな挿入型変異導入法の「世界標準」としてさらに磨きをかけるべく、一層の努力を続けたいと考えています。

受賞内容

「NMD抑制に基づく新しい遺伝子破壊法」

遺伝子トラップ法は、短いDNA断片(トラップ・ベクター)をゲノム上へランダムに挿入させることにより、内在性遺伝子を機能的に破壊する手法です。このうちプロモーター・トラップ法は、従来から広く利用されていますが、標的細胞中で発現がない遺伝子をトラップすることができない、という問題点を内包しています。一方、ポリA・トラップ法では、標的細胞中での発現の有無に関わらず遺伝子を捉えることは出来るものの、ベクターが遺伝子の最後のイントロンに挿入された細胞クローンのみが選択的に単離されるため、トラップによって引き起こされる遺伝子欠損の領域が非常に小さくなってしまう、という重大な事実に我々は気づきました。さらに我々は、ポリA・トラップ法におけるこのベクター挿入部位の著しい「偏り」が mRNA サーベイランス機構のひとつ、nonsense-mediated mRNA decay (NMD) によって生み出されていることを突き止め、NMD 抑制型の新しいポリA・トラップ法「UPATrap」を開発しました。これにより、標的細胞中での発現の有無に左右されることなく、遺伝子の上流部分で確実に遺伝子トラップを行うことが初めて可能になりました。


図 mRNAサーベイランス機構nonsense-mediated mRNA decay (NMD)の抑制に基づく新しい遺伝子破壊法「UPATrap」の開発により、マウスES細胞中における発現(転写)の有無/強弱に左右されることなく、ほぼ全てのタンパク質コード遺伝子を、ランダムな挿入型変異導入法により、完全に破壊することが可能になった。

関連する論文
  1. Shigeoka, T., Kawaichi, M., Ishida, Y. (2005).
    Suppression of nonsense-mediated mRNA decay permits unbiased gene trapping in mouse embryonic stem cells.
    Nucleic Acids Res. 33, e20.
  2. 重岡稔章, 石田靖雅 (2005).
    NMD経路の抑制による理想的な遺伝子トラップシステムの構築.
    細胞工学 24, 729-733.

(2007年09月18日掲載)

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