NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科植物分子遺伝学研究室の鷲田治彦さん(博士研究員)が2013年日本育種学会秋季大会(第124回講演会)における日本育種学会優秀発表賞を受賞

 バイオサイエンス研究科植物分子遺伝学研究室の鷲田治彦博士研究員が日本育種学会より、2013年日本育種学会秋季大会(第124回講演会) における日本育種学会優秀発表賞 を受賞しました。 日本育種学会では、若手研究者の研究を奨励する目的で、優れた研究発表を選び日本育種学会優秀発表賞として表彰しています。学会長の任命による投票員の投票によって選定されます。 

受賞コメント

 この度、鹿児島大学で行われた2013年日本育種学会秋季大会(第124回講演会)における優秀発表賞を頂き大変光栄に思っております。故島本功教授、辻寛之助教をはじめ、研究室のポスドク、学生、技術職員の方々のご助言、ご協力のおかげであり深く感謝しております。また、本研究を滞りなく進めることができたのも、奈良先端大の素晴らしい研究環境と支援体制であり、この場を借りてお礼申し上げたいと思っております。
 島本先生の多大な功績から比べて些細なものですが、今回、小さな「花」を咲かせることができました。今後、さらに精進し、本研究を発展させることで、大きな「花」をたくさん咲かせ、亡き恩師の墓前に捧げたいと思っております。 

受賞時の発表内容

膜透過ペプチドを利用したイネフロリゲンタンパク質直接導入による人為的開花制御

 植物が花を咲かせるための決定的な分子であるフロリゲン、イネHd3aタンパク質を、膜透過ペプチドを利用して直接、イネ、シロイヌナズナ両茎頂細胞に導入し、下流で働く花芽形成遺伝子を活性化させることに成功するとともに、シロイヌナズナにおいては対照区と比較して開花の促進に成功しました。
 フロリゲンの実体であるHd3aタンパク質は葉で合成された後、実際に花のつく茎の先端(茎頂)まで移動して花芽形成を開始させます。通常では、タンパク質は細胞膜をそのまま透過することは出来ませんが、私達は膜透過ペプチドを利用することで、Hd3aタンパク質を植物茎頂細胞に人為的に直接導入することに成功しました。Hd3aタンパク質をイネやシロイヌナズナ茎頂へ直接導入後、花芽形成遺伝子であるイネOsMADS15遺伝子やシロイヌナズナAP1遺伝子が活性化することを確認し、シロイヌナズナでは、短日条件下において対照区と比較し、開花の促進が観察されました。
 これらの結果から、近い将来、本技術を発展、改良することで、フロリゲンを農薬や植物調整剤のように用い、開花を制御する可能性が開かれたと考えています。

【特記事項】
 本成果は、生研センター・イノベーション創出基礎的研究推進事業「フロリゲンの直接導入による開花・生長調節技術の創出」(研究代表者・辻 寛之 奈良先端大・バイオサイエンス研究科)の支援を受けて実施されました。

(2013年11月21日掲載)

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