NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

痛み受容に対する大脳の役割

演題 痛み受容に対する大脳の役割
講演者 岩田 幸一 教授(日本大学歯学部生理学教室)
使用言語 日本語
日時 2011年4月6日(水曜日) 16:00~17:00
場所 大セミナー室
内容 侵害情報は脊髄後角を経由し、視床に到達し大脳皮質および辺縁皮質に送られ、最終的に痛みとして認知される。侵害情報は視床において、外側部に位置する視床腹側基底核群を経由し皮質第一次体性感覚野(SI)に至る外側の経路と、視床の髄板内核や中心核を経由し辺縁皮質に至る内側の経路の2つに分かれる。機能的にはこれら2つの経路は異なった役割を担っており、外側経路は主に痛みの弁別において重要であるのに対し、内側経路は痛みの情動的性質を担っていると考えられている。しながら、これら2つの上行路の痛み受容における役割の詳細な神経機構に関しては、不明な点が多く残されている。
これまでに我々は、痛覚受容に対する2つの経路の機能的役割を明らかにするため、内側経路の終着点の一つとして知られている前帯状回(ACC)および外側経路として知られているSIにターゲットを絞って、形態学および電気生理学的に解析を進めてきた。その結果、ACCおよびSIの侵害受容ニューロンは、ともに多くのスパインを持ち、軸索側枝を多く有する小型のニューロンであることが明らかになった。また、覚醒サルを用いた電気生理学的から、侵害情報の弁別に対してはSI侵害受容ニューロンが重要な役割を担っているのに対し、ACC侵害受容ニューロンは侵害情報の弁別よりも、情動的局面を担っていることが確認された。さらに、これらのニューロンの多くはサルが注意を光に移すことによって活動性を低下させた。また、狂犬病ウイルスを用いたtranssynaptic tracingの実験から、ACCには小型だけでなく比較的大型の神経節細胞から感覚情報を受け取っているニューロンが多数存在することが明らかになった。
本講演では、上記に示した研究結果を紹介し、これら2つの上行路の機能的役割について考察したい。
問合せ先 神経機能科学
塩坂 貞夫 (sshiosak@bs.naist.jp)

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