小胞体ストレス応答と脂質 ~酵母の研究から分かったこと~
- 演題
- 小胞体ストレス応答と脂質 ~酵母の研究から分かったこと~
- 講演者
- 木俣 有紀 博士 (バイオサイエンス領域 オルガネラ制御生物学研究室博士研究員)
- 使用言語
- 日本語
- 日時
- 2025年12月22日(月曜日) 13:30~14:15
- 場所
- バイオサイエンス大講義室(L11)
- 内容
分泌タンパク質の折り畳みや脂質合成を行うオルガネラである小胞体の 機能不全は、小胞体ストレスと呼ばれる。真核生物は総じて、小胞体ストレ スを緩和するために、遺伝子発現プロファイルを変動する。この現象は「変 性タンパク質により引き起こされ、変性タンパク質を処理するための応答で ある」と考えられており、Unfolded Protein Response(UPR)と呼ばれ、そのメカ ニズムの解明は出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いた研究が先行し てきた。UPRの引き金となるセンサータンパク質Ire1は、変性タンパク質を直 接的に検知することが以前から知られていたが、それとは異なるメカニズム により、膜脂質の異常も小胞体ストレスとしてIre1によって検知されることが 演者らの研究により見いだされた。また、そのような膜脂質関連の小胞体 ストレスの新たな事例として、リン脂質の一種であるフォスファチジルコリン 生合成の中間体であるフォスファチジルモノメチルエタノールアミンの蓄積 が挙げられることが分かった。さらには、UPRの帰結として引き起こされる事 象として、中鎖脂肪酸の割合が増加し、これも小胞体ストレスの緩和に寄 与することも分かり、UPRと脂質類との密接な関連が明らかとなった。
- 問合せ先
- 植物代謝制御
出村 拓 (demura@bs.naist.jp)
奈良先端科学技術大学院大学