植物の器官再生を支える多細胞動態
- 演題
- 植物の器官再生を支える多細胞動態
- 講演者
- ドル 有生 博士 (バイオサイエンス領域 植物再生学研究室 博士研究員)
- 使用言語
- 日本語
- 日時
- 2025年11月20日(木曜日) 15:30~16:15
- 場所
- C109
- 内容
生物がもつ秩序だった、かつ多様な形態を生み出すには、どのような細
胞動態が必要なのか?発生生物学の根幹をなすこの問いに取り組むため
私は過去、1細胞の分裂・分化のパターンの違いによって多様な形態が生
み出される植物の気孔発生系をシンプルなモデルとして設定し、進化発生
生物学的研究を行なった [1,2]。一方、植物の茎頂分裂組織(SAM)のような
多細胞からなる立体的な構造の形成過程では、個々の細胞動態を協調す
る仕組みが必要になる。こうした多細胞動態の制御による形態形成の仕組
みを解明するため、現在私はシロイヌナズナの器官再生系をモデルとして
研究を行なっている。組織培養によるシロイヌナズナのシュート再生系では、
一見無秩序なカルス組織内に幹細胞集団が形成され、やがて秩序だった
形態をもつSAMが新生する[3]。私の研究から、この形態形成過程において
細胞間および組織間のコミュニケーションが重要な役割を果たすことが分
かってきた。本セミナーでは特に (A) シュート幹細胞の形成に重要な転写因
子WUSCHELを発現する細胞の動態に注目した研究、および(B)再生におけ
る最外層組織の役割に注目した研究の結果を紹介し、再生を支える多細
胞動態について議論する。合わせて、再生や幹細胞制御の仕組みの多様
化過程の解明を目指した進化生物学的解析の展望についても議論したい。- 問合せ先
- 植物代謝制御
出村 拓 (demura@bs.naist.jp)
奈良先端科学技術大学院大学