細菌リポ多糖輸送装置の品質管理機構
- 演題
- 細菌リポ多糖輸送装置の品質管理機構
- 講演者
- 宮﨑 亮次 博士 (バイオサイエンス領域 構造生命科学研究室 助教)
- 使用言語
- 日本語
- 日時
- 2025年10月6日(月曜日) 13:30~14:15
- 場所
- L11
- 内容
グラム陰性細菌の外膜は外界と接しているため、抗生物質耐性や感染と密接に関わる。その外膜機能には、主要構成成分である様々な外膜タンパク質とリポ多糖(LPS)が重要である。LPSの外膜への輸送はLpt複合体によって行われ、その最終ステップに働くのが、外膜タンパク質LptDと外膜リポタンパク質LptEからなるLptD/E複合体である。LptDは新規抗生物質の有用な標的として注目されており、その成熟化過程も精力的に研究されている。ペリプラズムプロテアーゼBepAはLptD成熟中間体と相互作用し、正常なものの成熟化を促進する一方で、異常なものは分解除去する。また、LptMも詳細な機構は不明ながら、LptD成熟化に重要でることが明らかとなっている。本研究は、BepA/LptMによるLptD成熟化の分子機構の解明を目的とした。
詳細な生化学的解析から、BepAは、プロテアーゼ活性部位近傍のエッジストランド領域を介して、BAM複合体により外膜に組み込まれている途上のLptD成熟中間体と直接相互作用し、その基質を選別することを見出した。さらに、 AlphaFold2などのAI技術も活用し、 BepAのプロテアーゼ活性部位を覆い隠し活性を調整するループ領域がどのように構造変化し、どのように働くかを明らかにした。
一方、LptMはBepAよりも後のステップで、立体構造を形成したLptD成熟中間体に作用することを示した。さらに詳細な変異解析とクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析から、LptMはN末端の10アミノ酸に満たない短い保存領域を介して、LptDと相互作用し、その成熟化を促進することを見出した。
本セミナーではこれらの結果に基づいたLptD成熟化過程の最新モデルを紹介する。- 問合せ先
- 植物代謝制御
出村 拓 (demura@bs.naist.jp)