セミナー情報
植物の硫黄同化経路と硫黄欠乏応答の代謝生物学的解析
演題 | 植物の硫黄同化経路と硫黄欠乏応答の代謝生物学的解析 |
講演者 | 渡邉 むつみ 博士 (バイオサイエンス領域 植物二次代謝研究室 特任研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2024年12月25日(水曜日) 10:00~10:45 |
場所 | Rethinkバイオサイエンス大講義室 (L11) |
内容 | 自然界では、生物の生命活動に必要な有機硫黄は主に植物が硫黄を同化して合成する化合物に依存しており、硫黄同化のメカニズムの理解は非常に重要である。植物の硫黄同化経路では、異なるオルガネラに局在する複数の酵素群が関与しているが、その局在化の生理的意義は十分に解明されていない。本研究では、シロイヌナズナを用いて、硫黄同化の最終段階であるシステイン合成に関与する酵素群の機能解析を行い、これらの酵素群の機能的分担や、オルガネラ間および組織間での硫黄代謝ネットワークを明らかにした。さらに、植物の硫黄欠乏応答を解析するために、メタボロミクス解析を基盤とした統合オミクス解析を実施し、窒素やリンなど他の栄養欠乏や老化過程との代謝物や遺伝子発現の変動を比較することにより、硫黄欠乏に特異的な応答を明らかにした。現在、植物種間解析を通じて硫黄欠乏応答の保存性や特異性を評価しており、これらの知見を基に作物をはじめとする多様な植物種への応用に向けた研究基盤を構築している。また、硫黄欠乏応答遺伝子群の機能ゲノミクス研究も進行中であり、比較ゲノムシンテニー領域解析を活用して、遺伝子群の機能保存や分化過程を詳細に解明しようとしている。これらの成果は、将来的に植物の生育環境に応じた最適な施肥管理の改善や作物生産の最適化、さらには育種戦略の開発に寄与することが期待される。 |
問合せ先 | 遺伝子発現制御 別所 康全 (ybessho@bs.naist.jp) |