セミナー情報
植物の驚異的な再生能力の謎を解く:多能性獲得からパターン形成まで
演題 | 植物の驚異的な再生能力の謎を解く:多能性獲得からパターン形成まで |
講演者 | 池内 桃子 博士 (バイオサイエンス領域 植物再生学研究室 特任准教授) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2024年12月4日(水曜日) 10:00~10:45 |
場所 | バイオサイエンス領域 Rethinkバイオ大講義室(L11) |
内容 | 植物は高い再生能力を持ち、単離した体組織から完全な体を構築できる1。しかし、体細胞が多能性を獲得して新たな多細胞秩序を構築する機構は明らかとなっていない。そこで我々は、おもにシロイヌナズナの組織培養系と組織修復をモデル系として、器官再生の制御メカニズム解明に取り組んできた。我々は、切断刺激によって発現誘導されるホメオ ボックス 型の転写 因子であるWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX 13 (WOX13) が、傷口における組織修復と器官接着を促進する一方で、組織培養系における幹細胞新生を抑制することを見出した2, 3, 4。scRNA-seq やイメージング解析などの結果に基づき、WOX13がシュートの幹細胞新生に必須な役割を果たすWUSCHEL (WUS) と相互抑制的な関係にあり、これらが多能性を持つカルス細胞の分化運命を司るというモデルを提案した2。現在は、WUS 発現細胞動態のタイムラプス観察とモデリングを組み合わせて、カルス細胞が自律的に秩序立った幹細胞集団を構築する仕組みの解明を進めている。また、多能性獲得におけるエピジェネティック制御の果たす役割を新たに見出しつつある。さらに、数理生物学者との共同研究を展開して、シュートで形成される繰り返し構造の周期性を制御するパターン形成原理を提案している(投稿中)。本講演では、これまでの研究で明らかになってきた再生応答と形態形成に対する多層的な制御機構を概観するとともに、精密な操作技術の開発から多様な再生応答の理解まで、今後の展望についても議論したい。 |
問合せ先 | 遺伝子発現制御 別所 康全 (ybessho@bs.naist.jp) |