マウス肝臓における肥満特異的な代謝制御トランスオミクスネットワーク構築
- 演題
- マウス肝臓における肥満特異的な代謝制御トランスオミクスネットワーク構築
- 講演者
- 小鍛治 俊也 博士(東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 特任助教)
- 使用言語
- 日本語
- 日時
- 2021年3月2日(火曜日) 15:00~15:45
- 場所
- Zoomによる電子開催(参加をご希望の方は、ZoomのURLをお知らせいたしますので、bsjimu-kyomu@bs.naist.jp まで、参加希望の旨をご連絡ください。)
- 内容
血糖値は多臓器による協調的な作用により恒常的に制御されている。肥満等により各臓器における代謝制御が阻害されると、正常な血糖制御が行われないため、高血糖症や2型糖尿病を引き起こす。トランスオミクス解析とは、マルチオミクス解析により得られた変動分子にデータベースから得られた制御関係を与えることで、巨大分子ネットワークを構築する手法である。糖投与時の健常マウスと肥満マウスの肝臓に対してトランスオミクス解析を行い、大規模代謝制御ネットワークを構築し、マウス間で比較することにより、肥満における代謝制御ネットワークの機能不全を大規模に明らかとした。
健常マウスのネットワークからは、AktとErk がFoxo1やCrebのリン酸化とその下流遺伝子発現を介して広範な代謝経路を制御すること、転写因子Srebfがコレステロール合成系を糖投与後一過的に活性化すること、代謝酵素遺伝子による代謝制御は脂質代謝にやや多く見られること、健常マウス特異的な代謝物がアロステリック制御により多くの代謝経路に影響を及ぼすこと、などを見出した。一方で肥満マウスの縮約ネットワークからは、Akt制御経路が失われるが、Erk制御経路は保たれること、代謝酵素遺伝子による代謝経路制御は脂質代謝でやや減少し、糖・アミノ酸代謝でやや増加すること、健常マウスには存在した代謝物による代謝制御のほとんどが失われていること、などの特徴を見出しました。以上のことは、健常状態と肥満状態における血糖制御ネットワークの変化は非常に広範に及ぶことを示している。- 問合せ先
- 植物細胞機能
橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp)