セミナー情報
植物ホルモンによる器官形成とクロマチン構造の制御
演題 | 植物ホルモンによる器官形成とクロマチン構造の制御 |
講演者 | 安喜 史織 博士 (京都大学化学研究所 研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2020年1月16日(木曜日) 10:00~10:45 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 植物は様々な生理活性物質を有しており、それらの作用は多岐にわたる。本セミナーではサイトカイニンとオーキシンという2つの植物ホルモンについて取り上げ、器官形成やクロマチン構造制御における役割について紹介する。 サイトカイニンは細胞分裂を促進する活性物質として発見されたホルモンである。シロイヌナズナなどの高等植物においては、リン酸リレー系により情報伝達されることが知られている。苔類ゼニゴケは陸上植物進化の基部に位置するという点で近年注目されているが、これまでゼニゴケにおけるサイトカイニンの生理的役割は不明であった。私たちは、サイトカイニン情報伝達経路がゼニゴケでも保存されていることを明らかにした。また、サイトカイニンがゼニゴケの幹細胞付近で細胞の増殖と分化を制御し、様々な器官発生を早い段階から制御することを示した。ゲノムワイドな解析から、サイトカイニンの下流で働く因子としてMYB転写因子を同定し、サイトカイニン情報伝達経路の下流で細胞増殖・分化を制御する分子メカニズムに迫ろうとしている。 植物ゲノムは、通常のDNA複製の過程で損傷を受けるだけでなく、紫外線や重金属、病原菌感染等の様々な環境要因によってもその安定性が脅かされている。したがって、DNA損傷に対するチェックポイント機構だけでなく、DNA損傷そのものの蓄積を軽減するような独自の仕組みが必要であると考えられる。最近私たちは、植物ホルモンのオーキシンがゲノムを安定化させること、また、これにはオーキシンによるクロマチン構造制御が重要であることを見出した。本セミナーではその分子メカニズムについて提案するとともに、植物発生における生理的役割について考察する。 【参考論文】 |
問合せ先 | 植物細胞機能 橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp) |