NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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神経系細胞の分化および機能発現におけるエピジェネティクスと遺伝子座核内配置の役割

演題 神経系細胞の分化および機能発現におけるエピジェネティクスと遺伝子座核内配置の役割
講演者 滝沢 琢己 助教 (分子神経分化制御学講座)
使用言語 日本語
日時 2010年7月1日(木曜日) 13:30~
場所 バイオサイエンス研究科 L12会議室
内容

細胞の正常な分化および機能発現には、サイトカインなどの細胞外因子とエピジェネティック修飾などの細胞内の状態が複雑に連携し特異的遺伝子発現が精妙に制御されることが重要であると考えられる。

我々は、サイトカインによる神経幹細胞からのアストロサイト分化を研究する過程で、胎生早期の神経幹細胞は同サイトカイン群で刺激してもアストロサイト分化が誘導されないが、その機構として細胞内因子であるDNAメチル化が関与していることを突き止めた。すなわち、アストロサイト特異的遺伝子GFAPのプロモーター上の転写因子STATの結合配列が、胎生早期にはメチル化されておりSTATの結合を阻止することで転写が阻害されているが、胎生が進むと脱メチル化されサイトカイン刺激に応答し転写されるようになるという機構を解明した。

一方、近年遺伝子の発現制御には、このようなエピジェネティクスのみならず、遺伝子座の核内での位置も関連していることが明らかになりつつある。この細胞核構造に関連した転写メカニズムの解析に着手し、上記GFAPが単アレル発現であること、また、活性化アレルが不活性アレルに比べ核内のより中心近くに位置することを確認し、転写活性とアレルの核内での位置に有意な関係があることを明らかにした。また、最近では、最終分裂を終えたニューロンでの神経活動依存的遺伝子発現機構に着目し、この遺伝子群の転写誘導の時間的制御と核内での遺伝子座の空間配置に高い相関関係があることを見出している。現在、神経幹細胞の分化、および最終分裂後のニューロンにおける転写制御機構に着目し、細胞核構造とクロマチン制御という観点から解析を進めている。

問合せ先 バイオサイエンス研究科長
真木 寿治 (maki@bs.naist.jp)

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