ショ糖を含む培地のなかで、根の細胞は安定な概日リズムを維持できる。また、根の先端は長期にわたって分裂伸長過程を維持することができるため、概日リズムを刻む細胞(概日時計細胞)が連続的に増加する過程を観察することに適している。
本研究では、時計遺伝子CCA1の発現リズムをルシフェラーゼ発光計測法により観察し、シロイヌナズナの根における概日時計の時空間ダイナミクスの解析を試みた。これまでに、(1)根端において概日リズムの強い位相リセットが生じていること、(2)これによって恒暗・恒明条件下では根全体にわたってストライプ状の位相波(ストライプ波)が形成されることを明らかにしている(H. Fukuda, et al., Phys. Rev. E 2012)。本セミナーでは、ストライプ波の数理モデルを紹介し、根端における位相リセット機構について議論を行う。
(参考文献)
1) H. Fukuda, K. Ukai, T. Oyama, Self-arrangement of Cellular Circadian Rhythms Through Phase Resetting in Plant Roots. Physical Review E 86, 041917 (2012).
2) K. Ukai, *H. Fukuda, et al., Traveling waves of circadian gene expression in lettuce. Environ. Control Biol. 50, 237-246 (2012).