プロモーター非コードRNAによるエピゲノム制御と遺伝子活性化
- 演題
- プロモーター非コードRNAによるエピゲノム制御と遺伝子活性化
- 講演者
- 今村 拓也 准教授(京都大学理学研究科 生物多様性学特別講座)
- 使用言語
- 日本語
- 日時
- 2012年3月2日(金曜日) 15:00~16:00
- 場所
- L13会議室
- 内容
- げっ歯類と霊長類は、ほぼ共通のコード遺伝子セットを有しながら、脳には明らかな機能的差異が存在する。我々は動物種特異的非コードRNA(ncRNA)を網羅的に取得し、ncRNAを介した遺伝子転写制御機構とその生物多様性を解析しており、その成果の一部をここに紹介したい。マカクザルとマウスの大脳皮質を用いて、遺伝子発現制御領域であるプロモーター領域から発現するpromoter-associated ncRNA (pancRNA)の同定を試みたところ、マカクザルで約400種、マウスで約200種存在することが分かった。マカクザルで発現量が高い上位10種のpancRNAのうち、6種もがマカクザル特異的なものであったことから、種を超えて保存されたRNAの発現量が必ずしも高いのではなく、種間で多様なRNAにも生物活性が期待できることが想定された。この6種のうち4種のpancRNAの鋳型は、旧世界ザル特異的な挿入に由来することが示唆された。培養細胞を用いて、pancRNAを有する遺伝子プロモーターの活性測定を行ったところ、挿入DNAは転写制御に正の効果が認められ、そのDNAをメチル化すると転写抑制に働くことが分かった。DNAメチル化を介して抑えられていたプロモーター活性は、pancRNAとDNAグリコシラーゼの共発現により再び上昇したことから、DNA-RNAハイブリッド形成が転写抑制ではなく、DNA修飾変換を介して転写の“活性化”を実行している可能性も考えられる。本セミナーでは、ncRNAによる遺伝子転写活性化がもたらす生物・物理・化学的インパクトについて広く議論できれば幸いである。
- 問合せ先
- 分子発生生物学
高橋 淑子 (yotayota@bs.naist.jp)