タバコモザイクウイルス(TMV)は,長さ300 nm,外径18nm, 内径4 nmのチューブ状粒子である.我々はTMVの構造情報を元に,内部空洞に露出していると考えられるアミノ酸残基に的を絞り,遺伝子工学的手法を用いて様々な変異を導入した.最終的に,101番目のセリンあるいは106番目のグルタミン酸を陽電荷を持つリジン(K)に置換した変異体を用いて,Pt/CoやPtのナノ粒子列を作製することに成功した[1].野生型のウイルスを利用した際には,ナノ粒子列ではなくてワイヤが形成される[2].また近年は,外側に金結合ペプチドを提示した変異体を用いて金粒子を析出し,可視光領域のメタマテリアル創成に向けて取り組んできた[3].生体材料の持つ微小空間や,表面材料の特異的認識能を利用することは,磁性ナノ粒子の配置やメタマテリアル創成に限らず,様々な応用展開の可能性がある.
1. Kobayashi, M. et al., Nano Lett. 2010, 10, 773.
2. Kobayashi, M. et al., Chem Lett. 2010, 39, 616.
3. Kobayashi, M. et al., Proc. SPIE 2011, 8070, 80700C.