NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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第七回梅園賞授賞式を開催しました

【写真】波平昌一助教分子神経分化制御学講座助教、波平昌一博士が第七回梅園賞を受賞しました。梅園賞の趣旨にかなうように研究科の大学院生・教員の大部分が受賞者の講演を聞く機会を持つことを目指し、8月26日 淡路夢舞台国際会議場において開催中のグローバルCOEサマーキャンプ2010の二日目のプログラムとして、第7回梅園賞の授賞式と記念講演が行われました。今年も昨年と同様、サマーキャンプの他の発表と同様に英語での発表となり、海外からの招聘者を含む178名の参加者が聴衆となりました。
梅園賞は、梅園基金の設立趣旨に沿って、熱気溢れる時期にバイオサイエンス研究に精進し、優れた研究成果(論文発表)をあげた本学の助教あるいはポスドク研究員の1名を顕彰するものです。対象者が研究の推進に中心的な役割を果たしたと認められる発表論文(2008年6月1日~2010年5月31日の期間に査読付き国際学術誌に発表されたもの)の学術的価値とオリジナリティの高さに審査の重点が置かれています。受賞者には表彰状と副賞の目録が授与されました。

第七回梅園賞受賞者 分子神経分化制御学講座 波平昌一助教のコメント

【写真】表彰を受ける波平昌一助教この度は梅園賞という素晴らしい賞を拝受し、大変光栄に思っております。受賞の対象となった論文は、私が本研究科に就いてからその大部分を展開したものです。論文の受理に至るまでは苦難の連続でしたが、中島教授をはじめ、研究室の優秀なメンバーに支えられ、また、NAISTの諸先生方からの大変貴重なアドバイスを頂くことができたおかげで、それらを乗り越えることができました。この栄えある梅園賞を励みに、今後より一層、研究に邁進して参ります。

波平昌一助教の発表内容(演題と要旨)

「Committed Neuronal Precursors Confer Astrocytic Potential on Residual Neural Precursor Cells」

脳の中には、電気信号を発して情報を伝達し、記憶や学習に最も重要な役割を果たす神経細胞(ニューロン)だけでなく、その働きを助けるアストロサイトと呼ばれる細胞も存在します。発達中の脳内では、この2種類の細胞は同じ神経幹細胞と呼ばれる細胞から生み出されますが、順番としてはまずニューロンが作られ、その後にアストロサイトが作られます。本論文では、この「順番付け」のメカニズムの解明に取り組んだ結果、先に作られたニューロンが残りの神経幹細胞に働きかけ、アストロサイトを生み出す能力を授けることがわかりました。

神経幹細胞は、発生の初期から中期には、アストロサイトになるための情報が書き込まれている遺伝子に、「メチル化」(遺伝子・DNA分子にメチル基が結合し、構造が変化した状態)という鍵が掛かり、遺伝情報が読み取れないため、神経幹細胞はアストロサイトになることができません。本論文では、この鍵を外す細胞として神経幹細胞からアストロサイトより先に作られる細胞であるニューロンに着目しました。その結果、このニューロンが残りの神経幹細胞のノッチ(Notch)と呼ばれるタンパク質を活性化し、NF-Iと呼ばれるタンパク質の発現に至ると、遺伝子についていた「メチル化」という鍵が外されることを突き止めました。

梅園賞とは

1990年代、「“ステロイドホルモン受容体”と聞いて”梅園和彦”の名前を挙げることができなければ、その人は分子生物学の研究者としては門外漢だ」と言われる時代がありました。梅園先生は、それほど誰もが一目置く、伝説的な秀才であり、バイオサイエンス研究科の新進気鋭の助教授でした。卒業研究でJMBに論文を書き、大学院の期間にゼニゴケ葉緑体のゲノムプロジェクトのリーダー的存在を勤め、14報の論文を発表し、米国ソーク研究所のポスドク4年の間にCellに5報の論文を発表しました。しかし、不幸なことに、先生はもうこの世に居ません。ご親族の寄付を基にして、故梅園先生の遺志の実現を目指すとともに、先生の研究への取り組み、姿勢、研究や教育にかける情熱を私たち全員で共有するために梅園基金を創設し、先生の果たせなかった夢の実現を目指している若手研究者を「梅園賞」として顕彰します。
第1回募集時 磯貝研究科長(当時)の挨拶文より引用

(2010年09月01日掲載)

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