NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

高橋 麻美 (たかはし まみ)さん

  • 日立製作所 中央研究所
  • 2021年度(修士) 遺伝子発現制御研究室

自分・エキスパンション!

高橋 麻美さんの近況写真

『卒業生の声-広がるNAIST遺伝子』をご覧の皆さま。はじめまして、高橋麻美と申します。この度は高名な先輩方が勢揃いする中に名を連ねることができ、大変感激しております。2021年卒なので、ほんの1年前まで奈良先端大の学生でした。思い返せば、色々な記憶が鮮やかに蘇ります。ジンジャーエールとパイナップルが好きな別所先生のこと。松井先生との実験前・実験後の話し合いは緊張したけれど良い機会だったこと。そういえば入試順位は下から2番目だったこと。同期も後輩も先輩も面白い人が多かったことや、修論に追い詰められる中クリスマスに食堂の2階でケーキを食べたこと。先生方はもちろん、横内さん、村山さん、岩渕さん、ラボメンバーの皆さんは元気かな。朝ミーティングは今思い返しても辛かったなぁ(詳しくは増田 美和さんの記事をご覧ください!笑)、などなど。ラボメンバーをはじめ、学校関係者の皆様、就職支援センタの皆様含め、多くの人の縁に恵まれた実り多い学生生活でした。

私は遺伝子発現制御研究室に所属していました。そこで松井貴輝准教授ご指導のもと、ゼブラフィッシュの胚を用いて、生物を構成する膨大な数の細胞が、いつ、どこで、どのような指示を受けて分化するのか?というテーマに関して研究に取り組みました。入試順位が低いことから分かるように、研究は分からないことだらけで挫折も多かったです。これからの研究の下地となる論文を読むこと、細胞シグナル伝達の勉強、ゼブラフィッシュ胚への遺伝子導入、共焦点顕微鏡の操作、そして大の苦手だった蛍光免疫染色...できない!の連続でした。それに私自身の考えも甘かった。別所研究室では、そんな自分を改める機会を与えていただきました。それに、自分の頑張りを支えてくれる、そして認めてくれる研究室のおかげで大きく成長できたと思っています。指導すべきところは指導、思慮深さが必要な時には思慮深く。別所研究室はそんな研究室です。

私の現在の所属は日立製作所の中央研究所です。「ふーん、その中で生物系の研究をしているんだな」と思われる方が多いと思いますが、実はまったく別分野。私は研究開発グループ内の社会イノベーション協創センタというところにいます。社会イノベーションを研究する、と言われてもピンとくる方は少ないかと思います(私も同じでした!笑)。詳しくは調べていただくとして、簡単にご説明すると、ITとテクノロジーを活用して世の中にある様々な社会課題を解決する新しい事業・サービスの種を考え、社内外と協力してそれらを世に送り出すことを目的として研究に取り組んでいます。バイオサイエンスとはまったくの別分野ですが、持ち前の猪突猛進さと、別所研究室で鍛えられた物事の考え方・向き合い方、論理的思考力のおかげで、なんとか2年目を迎えることができました。

就職先を決めたきっかけは、松井先生と話した時に思ったことが一因にあります。M1時代の私は、恥ずかしながらお金のことばかり考えていました。先生と話した時にも「稼げればいいんです」と言っていたことを思い出します。その時に「本当にそんな感じでいいの?」と先生がちょっとおどけて、しかし真剣に尋ねてくれた時に、「私は本当は何がやりたいんだろう」と考えるようになりました。考えている最中にボストンに行ったこともきっかけの一つです。

奈良先端大では、IoT分野での知識を持った優秀な起業家精神を持った人材を育成するためのプログラムとしてGEIOTがあります。私も研究と両立しながら参加し、領域内の他の研究室の学生だけでなく、他領域にも交友関係が広がり、学生生活の充実に繋がりました。その中で、チームラムネの一員としてビジネスプランコンテストに挑戦したり(祝賀会は全部焼肉、幸せでしたね!)、英語全然できないのにボストンに行かせてもらったり、新しい学びの機会を提供していただきました。ボストンは大変でしたが、面白かったですね安西くん、平さん!あの時の学びと、松井先生に言われた一言が、「多くの人が今よりも適切に、強く連携し合える社会を実現したい」という私の考えを具体的にしてくれたのだと思います。
ですが、こうした印象的なきっかけだけが自分の将来を決めたわけではないということも分かります。奈良先端大の特色として多くの場所で挙げられるように、この環境ではバックグラウンドの異なる多くの人と、小さなキャンパス内で交流することができます。自分と別の研究室の学生や他領域の学生との交流も、他の大学と比べると気楽に思います。先生方、技官さんや秘書さんとも気軽に話せることも大事なことだと思います。様々な年代、様々な立場、様々な意見を持つ人たちの中で会話して、何かを体験し、気付いて学ぶ機会は得難い経験だと思います。たくさんのチャンスに溢れたキャンパスで、自分の人生を変えるチャンスを掴んでください。人生の中では自分が努力しても認めてもらえないことや、環境によって努力をしてもどうにもならないこともあります。ですが、奈良先端大では自分の努力次第で何にでもなれるチャンスを得られると私は思います。

ただ、研究だけでなく、ご自身の保護者の方、ご家族といった方々との交流もとても大切です。私はM2の時期がコロナ禍と重なりました。実家が関東だったこともあり、ちょうど家族と会えない時期に家族に病気が重なり、とても歯がゆい思いをしました。自分の育った環境を思うこと、身近な人たちとの交流を大切にすることも、ご自身の将来を思うことにつながります。研究も今しかできないかもしれませんが、ご自身の身近にも今しかできないことがあることも忘れないでください。

私は人、そして環境共に、とても恵まれた大学院生活を送りました。学生としてはかなり手のかかる学生だった私がここまで成長できたのは、関わってくださった多くの方々のおかげです。本当にありがとうございました。わがままなお願いですが、私の後輩にあたる方々にも、熱く関わっていただけると嬉しいです。最後になりますが、この記事が多くの方の将来を考える際の一助になれば幸いです。皆様のお健康、ご発展をお祈りいたします。そして是非、奈良先端大で自分の可能性をばーんと広げてください!


【2023年01月掲載】

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