PROJECT1

環境に応答した植物の動的成長メカニズム


植物は外的・内的な因子に応じて自らの形を柔軟に変化させながら成長します。この特性は、生育環境を自ら変えることが出来ない植物にとって重要な生存戦略の1つです。植物が環境に応じて形や成長方向を変えるためには、個々の細胞が分裂周期や形態を変化させながら、かつ全体として統一された行動をとらなければなりません。そのような複雑な芸当を、中枢神経を持たない植物がどのようにして成し遂げているかは大きな謎に満ちています。

私たちは、上記の問いをシロイヌナズナの根をモデルとした研究から解き明かそうとしています。植物の発生研究において、シロイヌナズナの根は別格の存在です。根端部で繰り返される規則的な細胞分裂とその後の細胞伸長、それに続く細胞運命の決定と機能発現に至る過程を容易に観察できる優れたモデル系として、シロイヌナズナの根は世界中の研究室で広く用いられ、植物の主要な発生メカニズムの解明に大きな貢献を果たして来ました。
シロイヌナズナの根は、植物の「定常的」な成長と発生を研究するには優れた実験系ですが、これを「動的・可塑的」な発生過程の研究に用いるには、大きな障壁がありました。根の先端は器官の成長につれて動いてしまうため、根端部で起こる細胞や遺伝子発現の動態を高い時空間解像度でイメージングすることが出来なかったのです。 

 
 私たちは下向きの自然な角度で伸長する根の先端を自動的に追尾し、数日間にわたって高解像度でイメージングすることができる「水平光軸型 動体トラッキング共焦点顕微鏡」を開発しました。これにより、成長途上の根の中で1つ1つの細胞がどのように振る舞い、根の形態や動きを変化させているのか、またそれらの制御に関わる遺伝子やタンパク質の発現がどのように変化するのかを、つぶさに観察することが出来るようになりました。

 また情報学のエキスパートと共同で機械学習を用いた画像解析ツールを開発し、動画データから細胞の分裂や伸長を自動的に定量する技術を確立しています。これらの最新技術を駆使することで、栄養・水分・重力・接触刺激などの様々な環境因子を根の細胞がどのように受容し、器官レベルの成長を変化させるのかを明らかにしようとしています。 

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