研究成果

研究成果

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の渡辺大輔助教が公益財団法人 日本醸造協会より技術賞を受賞

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の渡辺大輔助教が公益財団法人 日本醸造協会より技術賞を受賞しました。

受賞コメント

この度は、このような栄えある賞をいただくことになりまして大変光栄に存じます。これも、日頃から私の研究を温かく見守り正しい方向に導いてくださる高木博史教授、実験面でこの上ないサポートをくださる研究技術員の杉本幸子さんをはじめとする、ストレス微生物科学研究室のスタッフ・学生の皆様方のおかげであり、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。また、清酒酵母との出会いを授けてくださった、酒類総合研究所の下飯仁先生(現・岩手大学)、赤尾健先生をはじめとするスタッフ・学生の皆様方、学生時代からの恩師であり現在も清酒酵母の研究をご一緒させていただいている東京大学・大矢禎一先生、そして共同研究でお世話になっている企業・研究機関・大学の先生方にも感謝の意を表したいと思います。これからも、この受賞にふさわしい研究者になれますように研究に邁進していく所存です。

受賞内容

 清酒酵母は、パン酵母などと同様に酵母Saccharomyces cerevisiaeに属しますが、同種の他の菌株と比較して、清酒もろみにおいて顕著に高いアルコール発酵力を示すことができます。しかしながら、その原因については、長年にわたり謎に包まれていました。本研究では、清酒もろみ中の遺伝子発現プロファイルを実験室酵母(発酵力の低い標準株)と比較することにより、清酒酵母がストレス応答関連遺伝子の発現に欠損を示すことを見出し、その一因として、ストレス応答を司るRim15pプロテインキナーゼ上に特異的な機能欠失変異が存在することを明らかにしました。同変異を実験室酵母に導入すると発酵速度が上昇したことから、清酒酵母の高発酵力を生み出す原因の一つを遺伝子レベルで解明するに至ることができました。また、代謝レベルでは、グルコースをピルビン酸・エタノールへと変換する解糖・アルコール発酵経路から枝分かれして、酵母のストレス耐性に重要な貯蔵性・構造性糖質を合成するためのUDP-グルコース合成経路を、Rim15pが促進していることもわかりました。つまり、酵母はグルコースを使って、解糖によりエネルギーとエタノールを生み出すこともできるし、UDP-グルコース合成を経て細胞を保護することもできるということになります。この炭素代謝の切り替えの鍵を握るのがRim15pであり、Rim15pを欠損した清酒酵母とは、自らの身を削ることで高い発酵力を獲得した菌株であると推察することができます。
 本研究は、実用酵母菌株の高発酵力の原因を遺伝子レベル・代謝レベルで解明した初めての成果となります。酵母によるアルコール発酵は、太古の昔から人類に活用されてきた最も有用な微生物機能の一つであり、微生物学の黎明期から無数の研究が行われてきたにも関わらず、酵母の発酵力を高めるにはどうすれば良いか?という素朴な問いに答えることは、これまで容易ではありませんでした。現状ではまだその一端が解明されたにすぎませんが、この研究を端緒として、ニーズに応じて酵母の発酵力を人為的に改変するための発酵デザイン技術を確立し、醸造・発酵産業に貢献していくことができるのではないかと考えています。

関連資料

     D. Watanabe and H. Takagi: Pleiotropic functions of the yeast Greatwall-family protein kinase Rim15p: a novel target for the control of alcoholic fermentation. Biosci. Biotechnol. Biochem., 81, 1061-1068 (2017)

     D. Watanabe, Y. Zhou, A. Hirata, Y. Sugimoto, K. Takagi, T. Akao, Y. Ohya, H. Takagi, and H. Shimoi: Inhibitory role of Greatwall-like protein kinase Rim15p in alcoholic fermentation via upregulating the UDP-glucose synthesis pathway in Saccharomyces cerevisiae. Appl. Environ. Microbiol., 82, 340-351 (2016)

     D. Watanabe, H. Takagi, and H. Shimoi: Mechanism of high alcoholic fermentation ability of sake yeast. In “Stress Biology of Yeasts and Fungi: Application for lndustrial Brewing and Fermentation” H. Takagi, H. Kitagaki (eds.), Springer, pp. 57-74 (2015)

公益財団法人 日本醸造協会

http://www.jozo.or.jp/

【ストレス微生物科学研究室】

研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/

(2017年10月19日掲載)

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