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発生医科学研究室
Developmental Biomedical Science

未分化細胞が神経外胚葉に分化する時に起きるゲノム構造の制御

Acquisition of neural fate by combination of BMP blockade and chromatin modification.

 

Agnes Lee Chen Ong, Toshiya Kokaji, Arisa Kishi, Yoshihiro Takihara, Takuma Shinozuka, Ren Shimamoto, Ayako Isotani, Manabu Shirai, 
Noriaki Sasai

iScience

10.1016/j.isci.2023.107887

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589004223019648

Agnes Lee Chen Ong博士の学位論文の全文が、https://library.naist.jp/opac/book/108167にあります)

概要:ES細胞のような未分化な細胞が神経外胚葉の細胞に分化する際に、クロマチン構造が変化します。このプロジェクトではその詳細を明らかにしました。

 ポリコーム型と呼ばれる転写抑制複合体(PRC)の構成タンパク質の1つ「Phc1Rae28)」が、細胞のクロマチン状態を制御(図1)し、未分化細胞から神経前駆細胞への分化に必須の役割を果たすことがわかりました。

 胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞の集団が分化を始める最初の段階では、細胞が外胚葉・中胚葉・内胚葉といった細胞群に大きく分類されていきます。この際に、特に神経外胚葉に分化する際には、特定のシグナル分子(神経誘導因子)が必要であることが、よく知られています。同時に細胞のゲノム構造も変化すると考えられていましたが、その詳細はよくわかっていませんでした。

 今回私たちは、PRCに関与する遺伝子の遺伝子改変ES細胞の網羅的に作成し、Phc1Rae28)と呼ばれるタンパク質が、神経外胚葉への分化に必須の役割を果たすことを見つけました。この因子を欠損したES細胞は神経誘導因子に反応することができず、未分化な状態のまま止まることが明らかになりました(図2)。このPhc1欠損細胞は中胚葉や内胚葉の誘導因子には反応して分化できるため、Phc1は神経外胚葉に分化するときに特異的に必要だと言えます。

 また、Phc1欠損細胞と正常細胞のゲノム構造を比較したところ、Phc1欠損細胞では未分化性遺伝子のクロマチンが緩んだままになっていました。その結果、未分化細胞でのみ発現する遺伝子が発現し続け、分化が進行できない状態になっていることがわかりました。したがって、Phc1は神経分化におけるクロマチン状態の制御に必須の役割を果たすことが明らかになりました。

学生の皆さんへ

(1) 次の用語の意味を説明できますか。

外胚葉・中胚葉・内胚葉

神経誘導因子

ヘテロクロマチンとユークロマチン

ATACシーケンス法

ポリコーム型転写抑制複合体(polycomb repressor complex: PRC

CRISPR/Cas9

(2) ES細胞を神経細胞に分化させるためには、どのような操作(プロトコール)が必要でしょうか。

 

 

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