研究内容 横田 明穂

教育研究の全体像

地球に棲むすべての生物のエネルギーの源は太陽です。太陽のエネルギーを私たちに届けてくれる生物が植物です。  植物は太陽のエネルギーを大気中の炭酸ガス(CO2)に蓄え、デンプン、たんぱく質、脂肪などを作ります。この植物の生理作用が、光合成です。私たち動物はこれらの栄養源を食べ、身体を造るとともに、炭酸ガスに戻すことで、そこに蓄えられているエネルギーを効率よく取り出し、生きています。

 

植物が光合成に使っている太陽エネルギーは強力です。光合成に有効な可視光は、植物に含まれる水を数分で沸騰させてしまうほどで、光合成で作られる化学エネルギーは水から水素ガスも容易に作ってしまいます。

光合成で炭酸ガスを取り込んで有機物質を作っているたんぱく質がルビスコという酵素です。この酵素の能力はあまり良くなく、植物は葉の口である気孔を大きく開けて光合成しなければなりません。葉の中は湿度100%ですから、気孔を開けていると入ってくる炭酸ガスの500倍から1000倍の水が蒸散して逃げていきます。この時、熱も一緒に放出されます。植物に十分水を与えておくといいのですが、水やりを忘れると葉は気孔を閉じて乾燥を防ごうとします。日中、1平方メートルあたり1秒間に2000マイクロモルという単位の光が葉に照射されていますが、光合成には最大1000単位弱で十分です。残りのエネルギーは大半が水の蒸散時の気化熱として使われ、うまく処理されます。

水やりを忘れると、あるいは干ばつなどでは、植物はこの熱処理ができなくなり、上の図の赤字の1から7の過程が進行して枯れてしまいます。

 

  1. 植物にとって強光下で乾燥状態になることは絶対避けなければならない環境ですが、これに耐える能力を持った野生種スイカの強光・乾燥耐性能力の仕組み
  2. ルビスコが葉の細胞内で合成され、炭酸ガスを有機物に変える仕組み
  3. 余ってしまった太陽エネルギーから害が発生しないように上手く熱に変える仕組み

 

これらの研究を、研究室に所属する大学院生の教育の一環として実施しています。また、博士研究員(ポスドク研究員)との共同研究としても行っています。

研究室のもう一つの重要な狙いが、私たちの研究成果を実社会で役立てるための応用研究です。植物の光合成は食料(食糧)の生産を支えていることに加え、エネルギー資源や工業原料資源の合成も担っています。私たちの研究成果には、植物のこれら有用資源の生産力強化に直結するものが多く含まれています。現在、いくつかの応用研究を、国などの研究資金を使った受託研究として実施しています。

さあ、基礎研究と応用研究、ご興味のある項目をクリックして下さい。基礎研究 I は明石欣也博士、Ⅱは蘆田弘樹博士、Ⅲは宗景(中島)ゆり博士のライフワークです。また、受託研究は各研究者の専門分野を活かして実施しており、担当者が説明します。

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研究室の変遷と教育研究活動

バイオサイエンス研究科は平成6年度に設置されました。設置当初の分化・形態形成学講座教員は、大山莞爾教授(現石川県立大学教授)と河内孝之助手(現京都大学大学院生命科学研究科教授)の二人体制で始まりました。大山先生が京都大学大学院生命科学研究科教授に専念なさるに際して、平成8年度から横田明穂が教授、河内孝之助教授、竹村美保助手(現石川県立大学准教授)体制となりました。その後三宅親宏助手(その後九州大学農学部助教授などを経て、現在は神戸大学大学院准教授)の時期もあって、現在の体制となりました。

この間、バイオサイエンス研究科の植物科学分野7研究室では、本学設立にご尽力の山田康之教授(元学長、文化功労者)を中心に植物科学研究の世界のメッカを目指して、各種の大型外部資金の導入に成功しました。磯貝彰教授(現学長、文化功労者)や横田が主宰した学術振興会の未来開拓研究開発プロジェクトに始まり、大半の教授が大型の科学研究費を獲得してきました。その成果を中心に、平成14年度からは磯貝教授を中心に21世紀COE(Center of Excellence)に採択され、平成19年度からは島本功教授を中心にしたグローバルCOE拠点に採用されています。

また、最近出版されました週刊誌「東洋経済」では、我が大学は研究水準、教育水準ともに全国第一位の大学となっています。

 

このような成果は社会活動にも大いに活かされています。植物系7教授を中心には奈良先端大学院大学発ベンチャー「株式会社 植物ハイテック研究所」を設立しました。現在、野生種スイカ果汁を使った事業やバイオ燃料資源植物の分子育種などの研究を行っています。

現在、科学研究費補助金2件以外に、外部機関からの以下のような研究を受託しています(上図の水色矢印)。研究開始年代順に列挙します。青字の研究課題名をクリックするとそれぞれの研究課題のページを開くことができます。

  1. (独)科学技術振興機構(JST):先端的低炭素化技術開発(ALCA)事業
    イモ革命による持続的低炭素化地球生活の実現
  2. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)バイオマスエネルギー先導技術研究開発
    バイオ燃料植物ヤトロファの油脂生産最適化技術の開発
  3. 日本学術振興会二国間交流事業共同研究
    熱帯荒廃地緑化のためのヤトロファクルカスの酸性土壌耐性能強化
  4. 日産科学振興財団より特別研究課題
    植物遺伝子機能の解明とエネルギー植物育種への高度利用