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Research

miRNA発現制御機構

近年の研究で、蛋白質コーディング遺伝子は転写レベルの他、転写後レベルでも発現調節を受けていることがわかって来ました。miRNAの発現も同様に転写および転写後レベルで制御されているはずです(図1)。miRNAの発現異常は疾患組織で多く見られ、分子機構の理解が急がれます。私たちの研究室では健常・疾患組織でのmiRNA発現制御をゲノミクスや生化学的手法で研究し、それら分子機構の生物学的意義を細胞・個体レベルで検討します(図2)。

図1
図1 miRNA生合成経路の多様性

miRNA生合成経路の多様性

私たちの最近の研究から、典型的なmiRNA生合成経路の他にmRNAスプライシングやリボソームRNA生合成経路を用いて作られるmiRNAの存在が明らかになりました(図1)。これらの結果は、種々のRNAプロセッシング機構が意外な形で遺伝子発現制御に寄与していることを示唆しており、その分子機構の解析を行うとともに、これらの分子機構の生物学的意義を解明していきます。


図2 研究手法の概要

小分子RNA生合成経路の進化

多様な小分子RNA生合成経路の発見の過程で、特定の生物種のみに存在する小分子RNA生合成経路も見つかりました(図1)。これらの機構は免疫機構として機能しているようです。生物種間での小分子RNA生合成経路の多様性を調べるために、私たちは種々の生物種のサンプルから小分子RNAの同定と分子機構解析を行なっています。新たな小分子RNA経路の発見とその応用により現在のCRISPRやRNA干渉法を補完するような新たな手法を開発することができるかもしれません。

一細胞解析を用いたmiRNAプロセシング活性定量系の開発

一細胞においてmiRNAプロセシング活性がどのように変化し、それがmiRNAの生産効率にどのような影響を与えているのかは分かっていません。この点について調べるため、私たちは、miRNAプロセシング因子レポーター細胞を作製し、タイムラプスムービーを撮影、細胞トラッキングや蛍光定量といった映像解析により、miRNAプロセシング因子の量を定量する系の開発を行っています(図3,4)。


図3 一細胞解析を用いたmiRNAプロセシング活性定量系の開発

図4 三色蛍光タンパク質レポーターiPS細胞のタイムラプスムービー
(ETH Zurich, Timm Schroeder研究室提供)