PROJECT2
代謝産物を介した根と微生物の相互作用
植物は環境中の微生物と相互作用しながら成長します。特に病害微生物に対する防御は非常に重要で、植物は複数の免疫作用を通じて抵抗性を発揮します。植物と微生物の相互作用の研究では、葉に病原菌を接種して誘導される抵抗性反応を解析するのがこれまでの主流でしたが、最近は根と土壌微生物の相互作用が盛んに研究されています。病原微生物のみならず、植物の栄養吸収を助ける有益な微生物と根の相互作用も注目を集めています。土壌中の微生物の種類や密度を考えれば、植物の根が微生物との関係において如何に過酷かつ複雑な環境に置かれているのか容易に想像できます。
根と微生物の相互作用を解析する上で、根を構成する細胞群のどれが、いつ、どのようなメカニズムで抵抗性や共生能を発揮するかを明らかにすることが非常に重要ですが、植物病理学と植物発生学の研究者は歴史的に交わりが少なく、植物/微生物間の相互作用を、植物の形態や成長と結びつける研究は、根粒菌共生など特殊な例に限られていました。
根の先端にある「根冠組織」は、その位置から想像できるように、根の成長制御に非常に重要な機能を果たしています。根の重力センサーとして働くことは良く知られていますが、他にも代謝産物の分泌や、根冠を構成する細胞自体が生きたままが土壌中に分散されることで、根の周りの土壌環境(根圏)に直接的、間接的な働きかけを行っています。
私たちは根冠分化のマスター制御因子の変異体が、病害微生物に対する抵抗性を失っていることを見出しました。このマスター制御因子を起点とすることで、根冠細胞が病害微生物に対する抵抗性を発揮するメカニズムを、発生制御と代謝制御の両面から解析しています。