設立理念ならびに活動

設立理念

「あらゆる生き物は究極的には草である」と言われるように、ヒトをはじめ、すべての生物はそのエネルギー源を植物の光合成に仰いでいる。しかし、増えつづける人口とその活動、化石資源への全面的依存によって、地球規模での環境破壊と悪化が進み、また食糧危機が身近に迫っている。こうした状況に対応するために、遺伝子組換え技術による高収量、悪環境耐性の植物の創成に大きな期待が寄せられている。一方で、科学技術の進歩の速さから、社会にとって遺伝子組換え生物(GMO)はいまだに議論の対象であり、社会は混迷状態にある。

人類の幸福に貢献する健全な植物バイオテクノロジーの発展には、基礎から応用および実用に向けての分子育種に取組む研究者や技術者が集まり、最新の研究成果に関する情報交換を行うとともに、既存の学会や研究会の枠を超えた学際的な問題について充分議論する必要がある。同時に社会への的確な情報発信も、今まさに科学者に求められている重要課題である。

本研究会は、植物バイオテクノロジーの基礎研究および技術開発を飛躍的に促進させることを目的として、奈良先端科学技術大学院大学・山田康之教授(元学長、現・名誉教授)を委員長に選び、平成8年1月に発足した。山田委員長の下に第1期を満了し、平成13年からは第2期活動を行ってきた。この間、平成14年1月には磯貝彰教授(元奈良先端科学技術大学院大学副学長)、平成16年2月からは佐野浩元奈良先端科学技術大学院大学教授を委員長に仰ぎ、活動してきた。第3期(平成18年1月から平成22年12月)は横田明穂奈良先端科学技術大学院大学教授を委員長に、第4期(平成23年1月から平成27年12月)は佐藤文彦京都大学教授を委員長に、山田康之先生の理念実現を目指して、活動してきた。第5期(平成28年1月から平成32年12月)は、橋本隆奈良先端科学技術大学院大学教授を委員長に、以下の活動を行っていく。

活動の概要

1.科学技術研究の遂行と情報交換

第160委員会は、地球環境の保全と人類の永続的幸福のためにもっとも重要な植物の生物学研究と、地球環境保全、食糧の確保と資源開発のための植物高度利用の技術開発研究を行うとともに、これらの研究動向に関して情報交換を行う。

(1) 植物による環境保全と環境修復

20世紀の化石資源の大量消費によるCO2放出の結果、地球温暖化が顕在化してきた。植物のCO2固定能の向上や砂漠緑化は火急の課題である。一方植物を用いて積極的に重金属回収、汚染物質分解を行う環境浄化(phytoremediation)技術もさらに重要度を増しつつある。
第160委員会は植物の環境応答機構を解明し、その機構を有効に環境保全に活用するための研究を行う。

(2) 食糧確保

食糧確保のための植物科学研究と技術開発を強力に推進する。すでに世界人口は65億人に達し、2050年には90億人に達する。世界の農地の荒廃、異常気象、水資源の枯渇、砂漠化、塩土化の進行、飼料穀物の増加はいずれも食糧増産を阻む要因であり、人類生存のための食糧確保に残された道は分子育種のよる植物の機能改良である。
第160委員会は、植物生産性向上に不可欠な植物機能の解明と生産性向上植物の分子育種技術開発を目指す。

(3) 植物資源高度利用

化石資源に依存する物質文明では人類や地球は存続し得ないことが明確になってきた。今後、持続可能な社会を構築するには光合成能力の拡大と活用が基本であることが先進国で認識され、既存の化学工業プロセスに代わる、植物による物質生産技術の開発が求められている。植物は太陽電池を備えた生分解性の物質生産工場であり、植物の資源生産工場としての活用は世界の重要な方向となっている。
第160委員会は、植物の能力と植物機能の多様性を活かしつつ、代謝工学等による資源生産植物の開発を目指す。

2.植物科学技術情報の一般社会への発信

植物科学技術の最先端情報を広く社会に発信する活動を行う。安心な社会は科学技術の正確な情報公開によって達成される。
第160委員会は、植物バイオテクノロジーが21世紀の抱える地球規模での課題を解決できる強力な科学技術であることに立脚し、解説書の出版、講演会、情報発信専門家集団の養成等を通して、一般社会の植物バイオテクノロジーの健全な理解の達成に努力する。

3.国際ネットワーク推進

米国のバイオテクノロジー産業は、知的所有権の確保も含め猛烈な勢いで世界を凌駕しようとしている。欧州はEUとして一丸となり米国の攻勢に対抗しようとしている。日本政府もバイオテクノロジーの推進を主要政策の1つに掲げている。一方、発展途上国でも遅まきながら植物バイオテクノロジーの推進を打ち出し、とりわけアジア・アフリカ諸国は日本からの技術移転を望んでいる。
第160委員会は、諸外国の植物バイオテクノロジー機関との交流や情勢分析、アジア・アフリカ諸国との国際交流、協力を推進する。

主要な活動項目

1.科学技術研究の遂行と情報交換

(1) 定例研究会による学理・技術情報の交換

(2) 基礎、応用研究および産学共同研究の推進

2.植物科学技術情報の一般社会への発信

(1) 解説書の出版、講演会

(2) 情報発信専門家集団の養成等

3.国際ネットワーク推進

(1) 諸外国動向の分析

(2) 諸外国との交流、研究協力、等

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