成果報告
論文No.098
イネ幼植物において細胞質型グルタミン合成酵素1;2の欠損が、代謝バランスを崩し、その結果、分げつ数の減少を引き起こした
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大橋美和、石山敬貴、草野都、福島敦、小島創一、花田篤志、菅野圭一、早川俊彦、瀬戸義哉、経塚淳子、山口信次郎、山谷知行
- Pant J. in press. (2014)
Ohashi, M., Ishiyama, K., Kusano, M., Fukushima, A., Kojima, S., Hanada, A., Kanno, K., Hayakawa, T., Seto, Y., Kyozuka, J., Yamaguchi, S. and Yamaya, T. (2014) Lack of cytosolic glutamine synthetase1;2 in vascular tissues of axillary buds caused severe reduction in their outgrowth and disorder of metabolic balance in rice seedlings. Pant J. in press.
細胞質型グルタミン合成酵素1;2 (GS1;2)遺伝子が欠損した変異体イネにおいて、収量を規定する重要な要因の一つである「分げつ」数の減少が、これまでの当研究室の研究成果により明らかとなっている。「分げつ」の形成は、イネ基部の成長点を含む腋芽の伸長より始まる。本研究では、GS1;2欠損変異体の「分げつ」数減少が腋芽の伸長抑制に起因すること、基部のGS1;2は、節網維管束の篩部伴細胞や分げつ大維管束に発現することを明らかにした。また、GS1;2変異体では、基部の全窒素及び全炭素量の著しい減少に加え、デンプン粒の蓄積の増加、及びリグニン量の減少が観察された。さらに、マイクロアレイ解析の結果から、GS1;2変異体基部で、窒素および炭素代謝関連遺伝子の発現が減少し、そのため代謝バランスに大きな崩れが生じていることが判明した。以上の事実より、腋芽の伸長に必要な窒素及び炭素源の量的減少及び代謝の質的変化が腋芽の伸長を阻害し、結果として、GS1;2変異体の分げつ数の減少を引き起こしていることが示唆された。同時に本研究では、1) 基部のGS1;2がリグニン合成の過程で遊離したNH4+を再同化し、引き続き合成されるGlnが腋芽へと輸送され、その伸長に資すること、2) GS1;2欠損による「分げつ」数の減少は、「分げつ」抑制植物ホルモン、ストリゴラクトンに依存しないことを明らかにした。
図1 野生型(日本晴)、GS1;2欠損変異体、GS1;2欠損変異体相補系統およびNADH-GOGAT1欠損変異体における腋芽の写真
野性型イネにおいて腋芽が伸長する4葉齢になっても、GS1;2欠損変異体の腋芽の伸長は観察されなかった。
図1 GS1;2欠損変異体の基部における代謝関連遺伝子群の発現変動
幼植物期の野生型およびGS1;2欠損変異体の基部においてマイクロアレイ解析を行った。GS1;2の欠損により、窒素及びアミノ酸代謝に加え、糖、エネルギー、及び二次代謝の遺伝子の発現に大きな変化が生じ、変異体基部の代謝バランスの崩れが生じていることが判明した。