成果報告

論文No.084

イネの銅の導管への輸送に関与するOsHMA5

鄧鋒林、山地直樹、夏継星、馬建鋒
Plant Physiol. 163: 1353-1362 (2013)

Deng, F., Yamaji, N., Xia, J. and Ma, J. F. (2013) A member of heavy metal P-type ATPase OsHMA5 is involved in xylem loading of copper in rice. Plant Physiol. 163: 1353-1362.

 銅(Cu)は植物の必須元素で、様々な酵素の活性などに必要です。根によって吸収された銅は、地上部へ輸送されるために、まず導管に積込む必要があります。我々はイネHeavy metal-transporting P-type ATPase (HMA)ファミリに属するHMA5が銅の導管への輸送に関与していることを明らかにしました。OsHMA5は銅の輸送活性を示しました。栄養成長期において、OsHMA5は主に根の内鞘細胞に局在し(図1)、この遺伝子を破壊すると、地上部への銅の輸送が減少し、逆に根に蓄積しました。一方、生殖成長期において、OsHMA5は節、穂軸、穂首の導管周辺にも局在し(図1)、OsHMA5を破壊すると、稔実歩合が減少し、玄米の銅の濃度も減少しました。OsHMA5の発現は過剰の銅によって増加しましたが、銅や他の金属の欠乏によって影響されませんでした。これらのことから、OsHMA5は銅を導管へローデングするために必要な輸送体であることを示しています。

Fig. 1

図1 OsHMA5の組織局在。
A,根;B-C,第I節;D,穂首;E,もみ殻;F-G,穂軸