成果報告

論文No.082

非塩生植物の耐塩性機構:イネを中心とした植物の塩耐性機構の概観

堀江智明、唐原一郎、且原真木
Rice 5:11, doi:10.1186/1939-8433-5-11 (2012)

Horie, T., Karahara, I. and Katsuhara, M. (2012) Salinity tolerance mechanisms in glycophytes: An overview with the central focus on rice plants. Rice 5:11, doi:10.1186/1939-8433-5-11

 農地での塩類集積の増加が世界農業の脅威となっている。植物は、塩類集積土壌において、著しく生長・生産性が妨げられる。植物の耐塩性機構に関しては、古くから数多くの報告がなされてきた。このレビューでは、植物が塩ストレス環境下において水欠乏や細胞内に蓄積したNa+により引き起こされる毒性を回避する分子機構、およびアポプラスト経路で起こるNa+流入のメカニズムや侵入部位の特定についての報告を、イネに関する知見を中心として詳細に紹介する。

Fig. 1

図1 塩ストレスに晒された植物の根におけるNa+の流入経路、およびNa+毒性回避に関与する膜輸送体機能の概略図。
(a) シンプラストやアポプラスト経路を含むいくつかの植物の根におけるNa+流入経路。"?"マークは、塩ストレス下において大量のNa+流入口となる可能性が考えられている部位であるが、未だ結論が得られていない経路を示す。 (b) Na+毒性回避に必須の3つのNa+輸送系。 根表層細胞の細胞膜で行われるNa+排出機構(左)、導管内のへNa+蓄積を妨げるNa+再吸収機構(中)、および液胞膜を介したNa+隔離機構。