成果報告
論文No.066
TAWAWA1はメリステムの成長相の転換を遅らせることによりイネ穂の形態を決定する
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吉田明希子、笹尾真史、安野奈緒子、高木恭子、大門靖史、Rihong Chen、山崎諒、徳永浩樹、北口善教、佐藤豊、長村吉晃、牛島智一、熊丸敏彦、飯田滋、前川雅彦、経塚淳子
- Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 110, 767-772 (2013)
Yoshida, A., Sasao, M., Yasuno, N., Takagi, K., Daimon, Y., Chen, R., Yamazaki, R., Tokunaga, H., Kitaguchi, Y., Sato, Y., Nagamura, Y., Usijima, T., Kumamaru, T., Iida, S., Maekawa, M. and Kyozuka, J. TAWAWA1, a novel regulator of rice inflorescence architecture, functions through the suppression of meristem phase transition. Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 110: 767-772 (2013)
植物の見かけを決めるのは、植物の幹細胞である「メリステム」の活動です。メリステムは植物の成長にともなっていくつかの成長段階をたどります。なかでも、花メリステムは特別な段階で、メリステムは花メリステムになると花を作って活動を終えます。イネの穂の形成では、枝メリステムがやがて花メリステムに転換し、おコメをつけます。花メリステムへの転換のタイミングが穂の大きさを決める鍵になります。転換が早いと小さな穂に、遅ければたくさんの花をつける大きな穂になります。この研究で発見したTAWAWA1(TAW1) は、このタイミングを遅らせる作用をもつ遺伝子です。TAW1遺伝子に突然変異がおこると、花メリステムへの転換のタイミングが変わります。突然変異によってTAW1遺伝子の働きがわずかに強くなった変異体では、穂につくおコメの数が増加しました。ところが、TAW1の働きが強くなりすぎるとメリステムが増えすぎておコメはできません。また、TAW1を弱めると花の数が減ります。つまり、TAW1の働きの微調整が重要なのです。TAW1は、イネ科だけではなく、種子や花を収穫する作物の育種に広く応用できると期待されます。TAW1がメリステムの相転換のタイミングをコントロールするしくみはまだよくわかっていません。今後、TAW1の分子機能を解明することにより、植物の形づくりの不思議にまた一歩近づけるのではないかと考えています。
図1 コシヒカリ(野生型)(左)とtaw1-D1変異を導入したコシヒカリ(BC5F2)(右)の穂。一つの穂につくおコメの数が大幅に増加している。