成果報告
論文No.065
低温ストレスに応答したmRNA分解制御の網羅的解析
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千葉由佳子、峯田克彦、平井優美、鈴木悠也、金谷重彦、高橋広夫、尾之内均、山口淳二、内藤哲
- Plant Cell Physiol. in press. DOI: 10.1093/pcp/pcs164 (2012)
Chiba, Y., Mineta, K., Hirai, Y. M., Suzuki, Y., Kanaya, S., Takahashi, H., Onouchi, H., Yamaguchi, J. and Naito, S. (2012) Changes in mRNA stability associated with cold stress response in Arabidopsis cells. Plant Cell Physiol. in press. DOI: 10.1093/pcp/pcs164
mRNA分解制御は定常状態のmRNAレベルばかりではなく,mRNAの変化速度にも影響を与える重要な制御段階である。我々は低温ストレス応答に関連したmRNA分解による遺伝子発現制御を明らかにするために,マイクロアレイと転写阻害剤処理を組み合わせた"mRNA decay array"によって低温ストレスによるmRNA分解速度の変化を網羅的に解析した(図1)。その結果,平均的な遺伝子においては,その低温条件下におけるmRNAの半減期が12倍に伸びており安定化していた。この一般的な変化を基準にして,より安定化あるいは不安定化した遺伝子群を同定したところ,多くの遺伝子が低温ストレスに応答してmRNAの安定性を変化させていることが明らかとなった。興味深いことに,不安定化した遺伝子はストレス応答あるいはホルモン応答関連のタンパク質をコードするものが多かった。これらの遺伝子はmRNAの半減期を短くすることによって,ストレス応答に必要な迅速なmRNA量の変化を可能にしていることを示唆している。加えて,不安定化遺伝子にはPPRタンパク質をコードするものが多く含まれていることが明らかとなった。本論文ではそのmRNA分解制御に関わると考えられる遺伝子配列の特徴についても議論した。
図1 mRNA decay array の概略図
培養細胞に転写阻害剤を加えた後のmRNA蓄積量の経時変化を、低温ストレス有無のそれぞれについてマイクロアレイで比較することによって,低温ストレスに応答したmRNAの半減期の変化を網羅的に測定した。また,転写阻害剤添加直前のタイムポイント(0h)からmRNA蓄積量の変化を測定した。