成果報告

論文No.057

新規の画像解析プログラムを用いたシロイヌナズナの根端伸長の解析

岩元明敏、近藤衣里、藤橋弘朋、杉山宗隆
J. Plant Res. in press. DOI 10.1007/s10265-012-0523-5 (2012)

Iwamoto, A., Kondo, E., Fujihashi, H. and Sugiyama, M. (2012) Kinematic study of root elongation in Arabidopsis thaliana with a novel image-analysis program. J. Plant Res. in press. DOI 10.1007/s10265-012-0523-5

 根端の伸長速度の空間的パターンを決定するためには、測定開始時点と一定時間後の根端の画像を撮影し、両者の同一点を判定して移動距離を計測することが必要となる。従来の研究では、主に同一点の判定は目視、移動距離の計測も手動で行われてきた。しかし、この測定は多大な労力を要し、また同一点が判定しにくい部分については測定者の恣意的判断に影響されやすいという問題があった。そのため、最近ではこの測定を自動化するコンピュータプログラムも開発されてきているが、同一点の判定に多数の画像を必要とするなど、なおいくつかの問題を残している。そこでこれらの問題を解決するために、我々は限られた画像データから伸長速度の測定を自動的かつ確実に行う画像解析プログラム"GrowthTracer"を開発した。GrowthTracerは「特異点フィルター」と呼ばれる多重解像度フィルターを利用することで、2枚の画像のみから同一点を決定(マッチング)して、さらに移動距離を自動的に計測することができる。また、目視によって2枚の画像間で明らかに同一と分かる点の座標情報を追加入力することにより(ヒント点情報)、誤ったマッチングを防ぎ、精度の高い解析結果を得ることが可能である。このプログラムをシロイヌナズナ根端に用いたところ、正確な根端成長の空間パターンを得ることができた。