成果報告
論文No.046
オオムギアルミニウム耐性遺伝子HvAACT1の発現制御機構の解明。
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藤井美帆、横正健剛、山地直樹、最相大輔、山根美樹、高橋宏和、佐藤和広、中園幹夫、馬建鋒
- Nat. Commun. 3, 713. doi: 10.1038/ncomms1726 (2012)
Fujii, M., Yokosho, K., Yamaji, N., Saisho, D., Yamane, M., Takahashi, H., Sato, K., Nakazono, M. and Ma, J.F.Nat. Commun. 3: 713. doi: 10.1038/ncomms1726 (2012)
オオムギは根からクエン酸を分泌し、アルミニウムを無毒化する仕組みを持っている。クエン酸の分泌に関与する遺伝子HvAACT1の発現は常にアルミニウム耐性オオムギ品種で高いが、その発現制御機構は明らかではなかった。我々は、アルミニウム耐性品種にはHvAACT1遺伝子の上流に約1000塩基対(1kb)の挿入があることを突き止めた。この挿入は、プロモーターの役割を果たし、HvAACT1の発現量を増加させるだけでなく、発現部位を根の中心柱から根端へ変化させた。その結果、根の先端をアルミニウム毒性から守る役割をしていることを明らかにした。世界各国の栽培大麦265品種及び野生大麦154種類を調べたところ、この挿入は東アジアに栽培されている20品種にしか存在せず、東アジアの酸性土壌に適応するために進化してきた仕組みだと考えらる。さらに、この遺伝子の起源を解析したところ、本来この遺伝子は必須元素である鉄を根から地上部へ輸送するために必要なもので、すべての大麦品種に存在していることがわかった。