成果報告

論文No.023

シロイヌナズナはDNA二本鎖切断により積極的に核内倍加を引き起こす

安達澄子、南澤一徳、奥島葉子、稲垣宗一、愿山郁、近藤陽一、神沼英里、川嶋美香、豊田哲郎、松井南、栗原大輔、松永幸大、梅田正明
Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 108, 10004-10009 (2011)

Adachi, S., Minamisawa, K., Okushima, Y., Inagaki, S., Yoshiyama, K., Kondou, Y., Kaminuma, E., Kawashima, M., Toyoda, T., Matsui, M., Kurihara, D., Matsunaga, S. and Umeda, M. Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 108: 10004-10009 (2011)

 環境ストレスは様々な形でDNA損傷を引き起こす。中でもDNA二本鎖切断は染色体断片の喪失を伴うため、正常な遺伝情報の維持を脅かす重篤なDNA損傷である。我々はシロイヌナズナを用いて、DNA二本鎖切断が細胞の増殖やゲノム様態に与える影響を詳細に観察した。その結果、DNA二本鎖切断がエンドリデュプリケーション(核内倍加の一種)を引き起こすことを明らかにした。この現象は、DNA損傷のセンサーキナーゼであるATM, ATRや、その下流のシグナル伝達を制御する転写因子SOG1を必要としたことから、プログラム化された機構により積極的に誘導されることが明らかになった。動物ではDNA損傷を持つ細胞を殖さないために、DNA二本鎖切断に応答して細胞死を誘導することが知られている。しかし、シロイヌナズナでは核内倍加によりDNA損傷を持つ細胞を殖さないだけでなく、細胞を生かしたまま成長させる仕組みを持つことが示された。細胞を移動させることができない植物にとって、持続的な成長を一生を通じて保証するための優れた生存戦略であると考えられる。

Fig. 1

図1 DNA損傷はエンドサイクルを誘導する
DNA二本鎖切断のシグナルはATM−SOG1経路とATR−SOG1経路の両方を通って、細胞周期制御因子の発現を制御する。その結果、通常の細胞周期がエンドサイクルへと移行し、核DNA量が増加し、個々の細胞が肥大化する。エンドサイクルへ移行した細胞が再び分裂を始めることはないので、DNA損傷を受けた細胞はこれ以上増えない。