成果報告

論文No.018

植物細胞におけるピロリン酸ワールドの解明とH-ピロホスファターゼの機能調節

武藤由香里、瀬上紹嗣、林秀洋、桜井淳子、村井−羽田野麻理、服部洋子、芦苅基行、前島正義
Biosc. Biotechnol. Biochem. 75, 114-122 (2011)

Muto, Y., Segami, S., Hayashi, H., Sakurai, J., Murai-Hatano, M., Hattori, Y., Ashikari, M. and Maeshima, M. (2011) Vacuolar Proton Pumps and Aquaporins Involved in Rapid Internode Elongation of Deepwater Rice. Biosc. Biotechnol. Biochem. 75: 114-122

 浮きイネの急激な節間伸長は雨季の洪水を生き抜くための生存戦略であり、その伸長は著しい細胞伸長に由来する。細胞伸長には液胞体積の増大が必要であるが、その駆動力を作り出すのが液胞膜に局在するプロトンポンプとアクアポリンである。そこで、浮きイネ節間の細胞伸長におけるプロトンポンプとアクアポリンの挙動について調査した。冠水による節間の液胞プロトンポンプの膜上での分布密度は変化しないものの、細胞の伸長に伴う膜面積の増加分だけタンパクの増加が見られ、細胞伸長中に液胞上で一定の密度を保つよう供給され続けたことが示唆された。またプロトンポンプの内、深水条件では液胞のH-ATPase(V-ATPase)よりもH-pyrophosphatase(V-PPase)の方が優先的に合成され、その量も細胞伸長による液胞の増大にともない増加することが明らかとなった。また液胞膜型アクアポリンTIPでは、水透過活性の高い2つの分子種が、深水処理によりmRNA量、タンパク質量とも著しく増加することが確認でき、これらの分子が液胞の増大ひいては細胞伸長を支えることが示唆された。

Fig. 1

図1 深水処理によるTIPのタンパク質量の変化
浮イネをそれぞれの方法で深水処理後、節間から各2連で粗膜を調製した。これらについて、タンパク質量を評価した。 (A)イムノブロットを行い、各タンパク質を検出した。(B)イムノブロットで検出したバンドの強度を定量し、グラフ化した。 Dry 1日間の値を1とした相対値で示した。