成果報告

論文No.015

縮むか伸びるか?2つのイネ洪水耐性機構

永井啓祐、服部洋子、芦苅基行
J PlantRes. 123, 303-309 (2010)

Nagai,K., Hattori,Y and Ashikari,M. (2010) Stunt or elongate? Two opposite strategies by which rice adapts to floods. J PlantRes. 123: 303-309

 東南アジアや南アジア,アマゾン川流域や西アフリカにおいては,雨季における多量の降雨によって,大規模な河川や湖沼の氾濫がおき,多くの農地が水没してしまう。また,この洪水は一過的なものでなく長期間にわたっておこるため,多くの作物は生存できない。一方,浮イネは水位の上昇にあわせて節間伸長を行い,草丈を急激に伸長させる特殊な能力を持つため,常に葉先を水面上に出すことが可能となっている。浮イネは,この水面上に出た葉をスノーケルのように利用して呼吸を確保することで酸素不足を解消し,また光合成を行うことで伸長するためのエネルギーを確保することができるため,継続的な節間伸長を行うことができる。これまで、3つの研究グループにより独立に浮イネ性に関与するQTL解析が行われ、浮イネの遺伝子が節間伸長を促進するというQTLが第1, 3, 12 染色体上に検出された。

Fig. 1

図1 これまでに検出された浮きイネ性を制御するQTLの染色体座乗位置