成果報告
論文No.012
メタボローム解析のデータによって、グルタミン合成酵素1;1がイネの代謝バランスの調節に重要な機能をはたしていることが明らかとなった
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草野都、田渕真由美、福島敦史、舟山和宏、セリーヌ・ディアズ、小林誠、林尚美、土屋(中村)有美子、高橋秀樹、鎌田温子、山谷知行、斉藤和季
- Plant J. in press
Kusano, M., Tabuchi, M., Fukushima, A., Funayama, K., Diaz, C., Kobayashi, M., Hayashi, N., Tsuchiya N. Y., Takahashi, H., Kamata, A., Yamaya, T., and Saito, K. (2011) Metabolomics data reveal a crucial role of cytosolic glutamine synthetase 1;1 in coordinating metabolic balance in rice. Plant J. in press
水田で生育するイネはアンモニウムを無機窒素栄養として生育すします。グルタミン合成酵素(GS)はアンモニウムをグルタミンへ変換する酵素です。イネに三分子種あるサイトゾル型のGS1のうちGS1;1は、イネの生育に必須な遺伝子ですが、その遺伝子が破壊されることで、窒素代謝や炭素代謝がどのように変化するかという点については不明な点が残されています。そこで本論文は、野生型とGS1;1が破壊されたイネ間で網羅的な代謝産物の変動を定量的に調査しました。GS1;1欠損変異イネにアンモニウムを供与すると、葉鞘と根で過剰なアンモニウムの蓄積が起こりますが、他の代謝産物についても詳細に調べたところ、変異体では、1) 糖、アミノ酸およびTCAサイクルの代謝物が大きく変化していた、2) 二次代謝化合物が根で蓄積していた、ことが新しく判明しました。代謝物-代謝物の相関解析をしたところ、変異体の根ではトリプタミンと他の一次代謝との間に新規のネットワークが形成されたことが明らかとなりました。これらのことから、GS1;1は、アンモニウムを窒素源として生育するイネの代謝において、広範な役割を有することが明らかとなりました。
図1 イネの一次代謝と二次代謝の概要図
イネの代謝産物のうち、主要なものについて記した代謝マップです。イネの体内では、窒素同化、解糖系、TCAサイクル、光合成などが複雑に絡み合いながら、糖、アミノ酸、有機酸などの様々な化合物を合成しています。
図2 GS1;1が破壊されることで引き起こされる代謝系の変化
葉鞘(LS)、葉身(LB)、根(root)で、GS1;1が破壊されることで、代謝マップ上の化合物量がどのように変化するかについて記しました。水で栽培した場合と比較して、アンモニウムを与えて栽培した場合の代謝産物の変化が非常に大きいことが分かります。