成果報告

論文No.010

PARの不確実性が生物圏モデルにおける植物生理過程に及ぼす影響

趙在一、沖大幹、葉仁風、鼎信次郎、金元殖
Ecological Modelling 221, 1575-1579 (2010)

Cho, J., Oki, T., Yeh, P. J.-F., Kanae, S. and Kim, W. (2010) The effect of estimated PAR uncertainties on the physiological processes of biosphere models. Ecological Modelling 221: 1575-1579

 光合成有効放射量(PAR)は植物生理過程を駆動している重要な量であり、概ね400〜700nmの可視光域の太陽からの放射を指す。植物生理を考慮して陸面でのエネルギー・水循環過程を推計する陸面モデルでもPARの観測値、推計値をその入力とすることが望ましいが、観測されることが少ないため、太陽からの全放射量に対してPARが一定割合(0.5)であることが仮定されることが通常であった。地上でのフラックス観測網のデータを解析したところ、この太陽からの全放射量に対するPARの比は、曇った天候下では0.6にまで上昇し、逆に晴天下では0.42でほぼ一定であることが明らかとなった。晴天指数に対してこの比をパラメタライズした新たな経験式を用いると、この比が一定であると仮定した場合に比べて、気孔抵抗は-2〜4%程度異なってくることがわかった。気候変動によって地表面への入力放射量が変化することが想定されるが、植物生理にとって肝心なPARがどのように変化するのか、エアロゾルの影響も含めてより詳細な研究が必要であると考えられる。

Fig. 1

図1 太陽からの全放射量に対する光合成有効放射量(PAR)の比(縦軸)が晴天指数(横軸)に対してどのように依存しているかに関して、2種類の関数形を用いて観測データを当てはめた結果が(1)と(2)であり、従来は0.5で一定とされることが多かった。

Fig. 2

図2 新しく得られた2種類の経験式を用いて算定された日平均の気孔抵抗が、太陽からの全放射量に対するPARの比を0.5で一定と仮定した場合に対してどの程度異なるか(縦軸)を、太陽からの全放射量(横軸)毎に示した結果。概ね、-2%〜4%の範囲にあることがわかる。


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