成果報告

論文No.006

イネFOXシロイヌナズナ株を用いたメタボロミクス高速探索法による窒素代謝制御に関わる遺伝子の同定

Albinsky Doris、草野都、樋口美恵子、林尚美、小林誠、福島敦史、森昌樹、市川尚斉、松井敬子、黒田浩文、堀井陽子、津本裕子、榊原均、廣近洋彦、松井南、斎藤和季
Molecular Plant 3, 125-142 (2010)

Albinsky, D., Kusano, M., Higuchi, M., Hayashi, N., Kobayashi, M., Fukushima, A., Mori, M., Ichikawa, T., Matsui, K., Kuroda, H., Horii, Y., Tsumoto, Y., Sakakibara, H., Hirochika, H., Matsui, M. and Saito, K. (2010) Metabolomic Screening Applied to Rice FOX Arabidopsis Lines Leads to the Identification of a Gene-Changing Nitrogen Metabolism. Molecular Plant 3: 125-142

 植物メタボロミクスは遺伝子機能の同定や植物生理について深い洞察を与えてくれるツールの一つである。本研究では代謝物の量的変化に関与するイネ遺伝子の同定を目的とし、イネ完全長 (FL)cDNAを過剰発現させたシロイヌナズナ株(rice FOX Arabidopsis lines)に対してガスクロマトグラフ―質量分析計を使った有用遺伝子高速検索を行った。本法により発見した候補株の中で、我々はシロイヌナズナのLateral Organ Boundaries(LOB)Domain(LBD)/Asymmetric Leaves2-like(ASL)遺伝子, At-LBD37/ASL39のオーソログのイネFL cDNAが挿入されたラインに着目し、代謝物および転写物の包括的解析を行った。その結果、本株は窒素代謝に関わる代謝物群の蓄積量が変化していることが明らかとなった。またシロイヌナズナの遺伝子At-LBD37/ASL39過剰発現株を用いた実験でも同様の結果を得た。さらに、イネの遺伝子Os-LBD37/ASL39をイネに過剰発現し代謝物および転写物解析を行った結果、本遺伝子がイネにおいても窒素代謝に関わっていることを明らかにした。このように、遺伝子機能を付加した植物とメタボロミクスを組み合わせた有用遺伝子検索法は、イネおよびシロイヌナズナの高速遺伝子機能解析に有効である。

Fig. 1

図1 イネ遺伝子Os-LBD37/ASL39を過剰発現させたイネの形態的表現型(品種:日本晴)
(A)空ベクター挿入株(対照区)および2種類の独立過剰発現株(B)RK16331-4および(C)RK16331-13。(B)および(C)は対照区と比較して生育の遅延および葉の緑黄化といった表現型が認められた。


 |