NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

Notchシステムによる感染防御免疫機構

演題 Notchシステムによる感染防御免疫機構
講演者 伊藤 利洋 教授(奈良県立医科大学 免疫学講座)
使用言語 日本語
日時 2015年11月6日(金曜日) 16:00~17:00
場所 大セミナー室
内容 免疫システムにおいて感染防御は最も重要でかつ基本的な生体機構であり、 「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類の免疫システムで病原体から身体を守っている。 例えば、「自然免疫」は、原始的な防御システムで、マクロファージや好中球などが 非特異的に病原菌を貪食して排除する。 一方「獲得免疫」は、T細胞、B細胞といったリンパ球が侵入してきた病原体に対して 特異的により強力な免疫反応を起こし、さらに抗原によって判別し記憶(免疫記憶) することにより同一の病原体に遭遇する度に強化され、病原体に対してより早く 強力な攻撃が加えることができる。 この「自然免疫」と「獲得免疫」の相乗効果により、我々の身体は様々な病原体から 守られている。この感染防御免疫機構においては樹状細胞やマクロファージといった 抗原提示細胞に代表される自然免疫と、ヘルパーT細胞(Th)に代表される獲得免疫 の相互関係が必須であり、抗原やサイトカイン産生に応じて、適切なヘルパーT細胞 に優位に分化させることが重要である。 例えば、呼吸器感染症の代表的な疾患の1つである肺結核ではIFN-γを産生する Th1細胞やIL-17を産生するTh17細胞が優位に誘導される一方、寄生虫感染では IL-4やIL-13などを産生するTh2細胞が優位に誘導される。このヘルパーT細胞の 機能的分化を制御するシステムは、サイトカインだけではなく、抗原受容体からの 刺激や様々な副刺激の協調により精巧に制御されていることが明らかになってきている。 その副刺激の代表的なシステムの1つとして我々はNotchシステムが重要な役割を 果たしていることを明らかにしてきた。Notchシステムは進化上保存された 細胞間シグナル伝達経路で、多様な組織の発生や恒常性維持に深く関わっている。 我々は抗酸菌やインフルエンザウィルスによる呼吸器感染症モデルマウスを作成し、 感染免疫におけるNotchシステム制御が適切なヘルパーT細胞の分化だけではなく、 その病態形成にも深く関与することを報告してきた。 本講演では呼吸器感染症の病態をヘルパーT細胞の分化の観点から自然免疫と 獲得免疫の橋渡しであるNotchシステムに焦点を当てて紹介していきたい。
問合せ先 分子免疫制御
河合 太郎 (tarokawai@bs.naist.jp)

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