植物科学研究教育推進事業とは
目的
植物科学研究教育推進事業は、平成17年度から奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科を拠点として発足した5年間のプロジェクトです。日本の植物科学は、これまで、研究室、研究科、大学・研究機関という個々の単位で教育・研究が進められており、個々の研究者間で共同研究などのつながりはあっても、広く研究者間のネットワークを作る試みはありませんでした。本事業は、教育という視点から、研究室・大学の枠を取り払い全国の大学院生・若手研究者間のネットワークを作ることを目的としています。さらに、全国の大学に連携した教育体系を作り上げることで、日本の植物科学推進の基盤を作ることを目的としています。
活動
本事業では、年度毎に全国の植物科学系の大学院学生を対象として、研究プロジェクトの公募を行っています。毎年、25前後の優秀なプロジェクトが選抜され、選抜された大学院学生には、研究費の助成、技術教育、若手研究者間の交流の場の提供などの研究支援を行っています。
研究費は、上限300万円を支給しており、研究に伴う備品や消耗品の購入、奈良先端大学への旅費、さらに国内外の学会に参加する為の旅費などに使用出来ます。技術教育としては、毎年5,6月に奈良先端大学にて合宿形式で1週間の技術講習会を開催します。この技術講習会では、タンパク質複合体精製、タンパク質質量分析、バイオイメージングの三つの分野について、基礎から最先端までの技術を習得することができます。またこの技術講習会以外にも、必要に応じてそれぞれの技術教育を担当する教官から指導を受けることが出来、さらに奈良先端大学の設備を使用して実際に実験を行うことが出来ます。
さらに本事業では、選抜された大学院学生だけでなく、一般の若手研究者に対しても最先端の科学技術教育と交流の場を提供しています。具体的には、毎年生命科学一般に最先端の分野を取り上げた講義形式のワークショップ、及びシンポジウムをそれぞれ開催しています。これらの会の開催を通して、全国の大学院生を含めた若手研究者が学び、交流出来る場を提供し、将来研究を発展していく為の基盤作りに貢献しています。
これまでの参加学生リストはこちら をご覧下さい。
<年間スケジュール>
- 4月 方針発表会(参加学生のみ)
- 5-6月 技術講習会(参加学生のみ)
- 9月 生物科学の最先端をテーマにしたワークショップの開催(一般公開)
- 9月 次年度参加学生募集開始
- 11月 プロテオーム・バイオイメージング関連シンポジウムの開催(一般公開)
- 12-1月 次年度参加学生採用決定
- 3月 成果報告会(一般公開)
これまで行われた技術講習会・ワークショップ・シンポジウムの模様は こちら をご覧下さい。
教育
各種植物のゲノム情報が明らかになりつつある現在、遺伝子レベルの解析からタンパク質解析の時代へと進化しています。これまでの研究は、個々のタンパク質の機能に関する解析を中心として進められてきました。しかし、タンパク質は細胞内で相互作用し合い、複雑なネットワークを作りつつ機能している為、個々のタンパク質の解析から生命現象の全体像を明らかにすることは不可能です。そこで本事業では、タンパク質のネットワーク解析に焦点を絞り、その為に必要な技術の教育、及び新技術開発を行っています。このような最先端の科学技術教育を通して、将来の植物科学を担う人材を育成することを目的としています。
本事業に採択された大学院生は、以下の技術を習得することが出来ます。
- 生化学的なタンパク質相互作用因子の解析、及びタンパク質複合体精製
- 質量分析装置を用いたタンパク質の同定と定量、翻訳後修飾の解析
- 生細胞内でのタンパク質の可視化、FRET、BiFCなどによるタンパク質相互作用の可視化
本事業の支援を受けて、参加学生が出した研究成果のリストはこちらをご覧下さい。
植物科学研究教育推進ユニット
本事業の遂行の為、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科には、新たに研究室(植物科学研究教育推進ユニット、以下植物ユニット)が設置されました。植物ユニットは、プロジェクトリーダーの島本功教授と田坂昌生併任教授、及び教育・新技術開発を担当する3つのチーム(タンパク質ネットワーク解析チーム、タンパク質質量分析チーム、バイオイメージングチーム)から構成されています。各チームはそれぞれ、特任助教、ポスドク、技術補佐員から構成されており、そタンパク質複合体精製、プロテオミクス解析、バイオイメージング、それぞれの技術開発・指導を担当しています。
各チームの編成・活動内容はこちら をご覧下さい。