NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の河野祐介さん(博士研究員)が「第87回日本生化学会大会」において「若手優秀発表賞」を受賞

 バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の河野祐介さん(博士研究員)が「第87回日本生化学会大会」において「若手優秀発表賞」を受賞しました。

受賞のコメント

 「第87回日本生化学会大会」において「若手優秀発表賞」を受賞することができ光栄に思います。この賞を頂けたのは、日頃から研究を支えていただいている高木博史教授、大津厳生助教をはじめ、OBを含めた研究室のメンバーであるポスドクの森ヶ崎進博士、技術補助員の吉野みほ子さん、井田慶子さんナッタさん(現: BIOTEC)、仲谷豪さん(現:長瀬産業)、佐々木翠さん(現:日本食研)、鈴木茉里奈さん(現:資生堂)、玉越愛さん(現:日本アルシー)、高橋砂予さん、佐伯恭平君、舟橋依里さん、城山真恵加さん、加知卓磨君、鶴岡愛さんのおかげであると感じています。また、研究室の皆様の助言にも深く感謝しています。この受賞を励みに、今後さらに研究を発展させて、社会に貢献できるよう努めたいと思います。

第87回日本生化学会大会のホームページ
http://www.jbsoc.or.jp/

受賞した発表の内容

『新規な硫黄同化経路に関与するチオ硫酸硫黄転移酵素GlpEの機能解析:硫化水素生成機構』 

 大腸菌には、よく知られている硫酸イオンからのL-システイン合成経路(硫酸経路)の他に、チオ硫酸イオンからのL-システイン合成経路(チオ硫酸経路)が存在しています。我々は最近、チオ硫酸経路のcysM遺伝子破壊株が、チオ硫酸イオンを単一硫黄源とする培地でも僅かに生育できることを見出しました。このことから、大腸菌にはCysMに依存しない未知の「チオ硫酸同化経路」が存在することが示唆されました。本研究では、この経路に関わる新規の酵素の同定およびその応用を目的としました。
 我々は、このCysM非依存のチオ硫酸同化が、チオ硫酸硫黄転移酵素ファミリーの酵素により触媒される可能性を考え、これらの候補遺伝子をcysM遺伝子破壊株に過剰発現させて生育を調べました。その結果、glpE遺伝子の過剰発現が、cysM遺伝子破壊株の生育を野生株レベルまで回復させることが明らかになりました。さらに、炭素源がグリセロールの場合のチオ硫酸塩からのcysM遺伝子破壊株のL-システイン発酵生産量が、glpE遺伝子の過剰発現で増加することも見出しました。これらの結果から、glpE遺伝子が新規チオ硫酸同化経路に関与することが明らかになりました。また、同じチオ硫酸硫黄転移酵素のファミリーであるpspE遺伝子でも同様の効果が確認できました。
 本研究の成果は、未知の部分が多い硫黄代謝の解明やシステインの工業生産への応用につながると思います。 

関連する資料

  1. Kawano, Y., Ohtsu, I. ‡,*, Takumi, K., Tamakoshi, A., Nonaka, G., Funahashi, E., Ihara, M., and Takagi, H.: Enhancement of L-cysteine production by disruption of yciW in Escherichia coli, J. Biosci. Bioeng., (2014). (in press)
    : Equal contribution.
  2. 進化の果てに消滅した硫黄同化 - 大腸菌における硫黄の選択的利用機構, 実験医学 増刊 「驚愕の代謝システム」, 32(15), 108-114 (2014).
  3. L-システイン生産能が高められた腸内細菌科に属する細菌, 大津厳生、河野祐介、高橋砂予、舟橋依里、城山真恵加, 特願2013-183237

(2014年10月23日掲載)

研究成果一覧へ


Share:
  • X(twitter)
  • facebook