なぜ器官再生の研究をするのか
器官再生をモデル系として用いて、「体細胞はどうやってリプログラミングされるのか?」「細胞集団はどうやって自己組織化するのか」といった発生生物学の中心的な謎に挑んでいます。
植物の器官再生能力は、エリート品種のクローン増殖からゲノム編集による育種まで、様々なアグリバイオテクノロジーの基盤となっています。しかし有用な作物品種の中には器官再生がうまくいかないものもあり、ボトルネックとなっています。再生の困難さを克服するためには、植物の器官再生能力について明らかにする必要があります。

Shoot regeneration in tissue culture
モデル植物シロイヌナズナを用いた研究によって、wox13 変異体ではシュート(茎葉)の再生効率が著しく向上することを発見しました (Ogura et al 2023 Sci. Adv)。原因遺伝子であるWOX13は器官再生を抑制する機能を持つと考えられることから、その機能解明を進めることによって再生応答を制限する新奇のメカニズムを明らかにできることが期待できます。また、WOX13が陸上植物に広く保存されているため、これを標的として作物の培養技術開発につなげられる可能性も考えられます。
シュート再生に関する詳細は、我々の執筆した総説(Doll and Ikeuchi 2025 COPB)をご覧ください。

Callus formation at wound sites
植物は傷口に細胞塊であるカルスを形成しますが、そのメカニズムや生理機能についてはあまりよく分かっていませんでした。我々は傷口のカルス形成において重要な役割を果たすWOX13 遺伝子を発見しました(Ikeuchi et al 2022 Plant Physiol.)。WOX13 遺伝子は傷刺激とオーキシン蓄積によって発現誘導され、カルス形成と器官の再接着や接ぎ木において重要な役割を果たします(Tanaka et al 2023 PCP)。WOX13 を中心とした解析によって、カルスの形成メカニズムや意義を解明できることが期待できます。

Evo-Devo approach in regeneration study
器官再生応答は分類群によって大きく異なっており、我々はその背景にある遺伝子制御ネットワークの進化に興味を持っています。また、種によって異なる多様な再生応答についても研究していきたいと考えています。
詳細は再生メカニズムの進化を論じた総説(Doll et al. 2026 COPB)をご覧下さい。
