成果報告

論文No.086

シロイヌナズナのNADH依存性グルタミン酸合成酵素は、根のアンモニウム同化に重要な機能を担う

小西範幸、石山敬貴、松岡香矢、丸郁美、早川俊彦、山谷知行、小島創一
Physiol. Plant. 152: 138-151 (2014)

Konishi, N., Ishiyama, K., Matsuoka, K., Maru, I., Hayakawa, T., Yamaya, T. and Kojima, S. (2014) NADH-dependent glutamate synthase plays a crucial role in assimilating ammonium in Arabidopsis root. Physiol. Plant. 152: 138-151.

 低窒素条件で栽培された植物の根に硝酸とアンモニウムを与えると、最初にアンモニウムを吸収する。それゆえに、根におけるアンモニウムの同化機構の理解は植物の種類によらず重要である。アンモニウムは、グルタミン合成酵素 (GS) とグルタミン酸合成酵素 (GOGAT) が同化する。高等植物は二種類のGOGATを有している。このうち、Fd-GOGATは葉に多く分布し、光呼吸で放出されるアンモニウムを同化する。NADH-GOGATは根に多く分布するので、アンモニウムの初期的な同化に重要である可能性が示唆されてきた。この論文は、リアルタイムPCRやウェスタンブロット解析から、根にアンモニウムを与えるとNADH-GOGATが高く発現することを示した。免疫染色やプロモーター解析から、NADH-GOGATの局在はFd-GOGATの局在と異なることを示した。さらに、NADH-GOGATが根におけるアンモニウム同化に重要であることを逆遺伝学的に証明した。

Fig. 1

図1 シロイヌナズナNADH-GOGATはシンク器官と根に多く分布する。
NADH-GOGATはシンク器官と根で高く発現する。根の中でも、維管束組織で特に発現が高い。シンク器官の中でも非緑色組織に多く分布する。Fd-GOGAT1は成熟した葉の葉肉細胞に多く分布するので、NADH-GOGATとFd-GOGAT1の局在は、あまり重ならない。

Fig. 1

図2 アンモニウムを主要な窒素源とした場合、NADH-GOGATの機能欠損は生育不良を引き起こす。
T-DNAの挿入によりNADH-GOGATの機能が欠損したシロイヌナズナの生育を野生型と比較した。アンモニウムが主要な窒素源となる栽培条件でNADH-GOGATの欠損変異体の生育は不良であった。つまりアンモニウムの同化にNADH-GOGATは重要である。