成果報告

論文No.004

水耕栽培条件下で様々な濃度のアンモニウムを与えながら生育させた幼植物の根の長さを規定するQTL, qRL6.1のファインマッピング

小原実広、田村亘、蛯谷武志、矢野昌裕、佐藤雅志、山谷知行
Theoretical and Applied Genetics 121, 535-547 (2010)

Obara, M., Tamura, W., Ebitani, T., Yano, M., Sato, T. and Yamaya, T. (2010) Fine-mapping of qRL6.1, a major QTL for root length of rice seedlings grown under a wide range of NH4+ concentration in hydroponic conditions. Theoretical and Applied Genetics 121: 535-547

 根系の効率的な発達は、穀物の生産性に重要である。この論文では、水耕栽培したイネ幼植物根の長さを規定するQTLの同定を試みた。QTLの同定のために、日本型イネ栽培品種であるコシヒカリと、インド型イネ栽培品種であるカサラスの間で作成された、染色体置換系統群38系統を用いた。これらの系統群の種子根の長さをアンモニウム濃度が5μMのときと500μMのときで比較した。根の生育に影響するQTLが8個見出された。これらのQTLのうち、もっとも効果の高いQTLは、イネの第六染色体上に存在した(qRL6.1と命名)。この第六染色体に存在するカサラスの遺伝子領域によって、根の伸長が促進されることが明らかとなった。このQTLの効果を確認するために、qRL6.1がカサラスに置換された準同一遺伝子系統を用いて、根の生育を比較した。コシヒカリと比較して、qRL6.1がカサラスに置換された系統では、根の生育が大きく促進されることが明らかとなった。

Fig. 1

図1 根長を規定するQTL qRL6.1の機能
コシヒカリの遺伝子領域qRL6.1が、カサラスの遺伝子領域へ置換された準同一遺伝子系統(NIL-A)では、コシヒカリと比較して根長が長くなる。分子遺伝学的な手法を用いることで、根系の大きなイネを作成することができた。


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