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制御遺伝子を見つけ出す

植物のゲノムには形態形成に重要な未発見の遺伝子がまだ多数存在していると考えられますが、それらを通常の変異体スクリーニングで同定するのは容易ではありません。なぜなら植物のゲノム中では、多くの遺伝子が機能的に重複しているため、1遺伝子の破壊では表現型を現さない、つまり変異体そのものが見つからないからです。私たちは機能重複した場合であっても、形態形成に働く遺伝子を効率的に見つけ出す方法を開発しました。

現在よく知られている発生制御遺伝子の多くは、ゲノム配列が発表される以前にシロイヌナズナの変異体からで相次いで同定されました。それらの多くはゲノム上に機能重複した遺伝子を持たないものか、タンパク質産物に特殊な変化が起こるような変異が偶然に入った変異体から見つかっています。

植物の形態や生理応答は、ゲノム上の約3万個の遺伝子の働きで決まります。2000年にシロイヌナズナの全ゲノム配列が決定され、これを出発点にして、10年後の2010年には全遺伝子の機能が明らかになるのではないかと期待されました。3万個の遺伝子全ての破壊株を集める逆遺伝学的な手法によって、理論的には全遺伝子を機能解析の対象にできるからです。

しかし、ある意味で機械的に進められるゲノム解読とは異なり、遺伝子の機能解析の原動力は研究者というヒトがもつ科学的な興味です。発生研究者は発生という現象に興味があるのであって、何が起こるかわからない状態で闇雲に破壊株を集める気にはなれません。また、わずかな異常が起こっていても、興味がないことには気が付きにくいものですし、たとえ気が付いたとしてもそれを追及する気にはなりません。

 

私たちはモデル植物のシロイヌナズナにおいて、形態形成に重要な遺伝子を効率よく見つける方法を開発しました。この方法では、まず人工転写活性化因子GAL4:VP16 (GV)を、根だけで発現している植物ラインを出発材料に用います。この植物のゲノムに、GVの結合配列であるUASを含む外来DNAをランダムに導入し、独立な形質転換体のプールを作りました。形態形成に重要な遺伝子の上流部にUASが挿入された個体では、そこにGVが結合することで、その遺伝子の発現が根の全体で活性化されます。通常、パターン形成遺伝子は組織特異的に発現していますので、根の全体で強く発現が強制されると根の組織パターンに重篤な異常が現れます。このようにして取れた変異体から、UASの挿入位置を決めることで、比較的簡単に原因遺伝子を突き止めることができます。

過剰発現による変異体スクリーニングはアクティベーションタギング法と呼ばれ、従来から使われていました。私たちの方法は根だけで遺伝子の活性化が起こるように工夫した点が従来法との違いです。この方法で得られた変異体の異常は根に限定されるため、地上部は比較的正常に育ちます。種を取って変異体を確立することができるため、これまでの方法では同定されなかった遺伝子を同定することが出来ました。次のページでいくつかの例をご紹介します。

この研究を発表した論文:
Waki T. et al., (2013) "A GAL4-based targeted activation tagging system in Arabidopsis thaliana." Plant J. 73, 357-367. PubMedPublisher