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組織形成を支える細胞間シグナル

植物の細胞は細胞壁で固定されているため、位置や方向をあとから変えることが出来ません。そのため、組織を正確に配置するためには、個々の細胞の分裂や分化を器官内での「位置」に応じて柔軟に制御する必要があります。このような植物のパターン形成は、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか?

 

ある細胞が器官内で自分の位置を知るためには、周りの細胞と緊密に情報交換する必要があります。実際、個々の細胞は、常に周りの細胞と「位置情報 (positonal cue)」を交換し、その情報に応じて自分の分裂や分化を決めていることが分かってきています。このような「位置情報に基づくパターン形成」は、植物発生の基本原理の1つです。

 

細胞どうしの情報交換には、細胞外に放出されるシグナル分子と、それを感知する受容体を使うのが動物と植物に共通して見られる一般な方法です(上図)。実際、最近になって植物の発生を制御するペプチドホルモンとその受容体が次々と見つかっています。しかし、植物には、動物には見られない独特の細胞間情報伝達経路があります。

 

植物の細胞は細胞壁で隔てられていますが、実は、細胞壁には「原形質連絡 (plasmodesmata = PD)」と呼ばれる微細なトンネルがあり、これによって細胞質どうしがつながっています。PDの存在自体は古くから電子顕微鏡による観察で認識されていました。また、このトンネルが、植物ウィルスの感染拡大経路になっていることから、これまでは主に植物病理学者がPDを研究していました。しかし20年ほど前から、発生に重要な転写因子(核内で遺伝子の発現を調節するタンパク質)のいくつかが、PDを通って細胞間移行することが明らかになり、私たちを含めた発生生物学者がPDの機能に関心を持つようになりました。