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胚珠を形づくるマイクロRNA

 
種子植物の胚珠は中央部の胚嚢を2枚の珠皮が取り囲む構造をしています。胚嚢は減数分裂で生じる4つの娘細胞の1つに由来し、卵細胞と中心細胞を含んでいます。受精後に卵は胚となり、中心細胞は胚乳になります。珠皮は受精後の胚珠の成熟を経て種皮となります。胚珠が持つ複雑な構造は、生殖細胞の形成のみならず、受精や胚発生、種子の形成に必須です。胚珠が持つこのような複雑な構造は、どのようにして作られるのでしょうか? 

 

シロイヌナズナの珠皮の形成には、HD-ZIP III転写因子群の機能が必要であり、これらの遺伝子の多重変異体では、種皮形成が阻害されます。興味深いことに、マイクロRNA165/166 (miR165/6)の標的配列に変異がおこることで、HD-ZIP IIIの発現が広がった変異体でも、胚珠の珠皮形成に異常が生じます。このことはmiR165/6によりHD-ZIP IIIの発現パターンを正しく制御することが、胚珠の形成に必須であることを意味しています。しかし胚珠発生段階のいつ、どこでmiR165/6が産生され、それらがHD-ZIP IIIの発現をどのように制御しているかについては、全くと言ってよいほど分かっていませんでした。

 

 
私たちは胚珠発生の各段階において、miR165/6を産生する9つのMIR165/6遺伝子がどのように発現しているかを調べました。その結果、MIR166DMIR166Gという、これまでほとんど解析されてこなかった2つの遺伝子が、胚珠原基の基部側で発現し、これによって産生されたmiR165/6が、PHBの発現領域を内珠皮の内側の細胞層に限定化することで、正常な珠皮をもつ胚珠を形成していることを見出しました。
 
私たちは以前の研究で、シロイヌナズナの9つのMIR165/6遺伝子のうち、MIR165Aだけでも、根、葉、胚においてPHBの発現パターンを正常に制御し得ることを示していますが、これではゲノム上に機能的に同一なmiR165/6を産生する複数の遺伝子がある意義が不明でした。胚珠を用いた研究により、植物の発生において単一のmiRNAを産生するために複数の遺伝子座が存在する意味が明らかとなりました。
 


この研究を発表した論文

Hashimoto, K., Miyashima, S., Sato-Nara, K., Yamada, T. and Nakajima, K. Functionally diversified members of the MIR165/6 gene family regulate ovule morphogenesis in Arabidopsis thaliana. Plant Cell Physiol. 59, 1017-1026 (2018). 
PubMed Publisher (Open Access)


この研究は、新学術領域研究「植物発生ロジック」の支援を受けて行ったものです。