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染色体およびゲノムの維持と再編の分子機構

 染色体欠失、重複、転座などの染色体レベルでの遺伝的変化については、その発生原因やプロセス、制御機構などの分子レベルでの理解はあまり進んでいません。私たちは、二倍体出芽酵母を用いて、染色体異常の検出と詳細な解析を容易に行える実験系を開発しました。これまでに、染色体異常の発生に相同組換えが深く関与することが分かってきたので、相同組換えの機能制御を中心に研究を進めています。染色体異常の発生に関連する因子のプロテオミクス解析も始めています。

この研究テーマに関連する発表論文とその解説

  • Yoshida, J., Umezu, K., and Maki, H. (2003). Positive and Negative Roles of Homologous Recombination in the Maintenance of Genome Stability inSaccharomyces cerevisiaeGenetics, 164, 31-46. ( PubMed 12750319)

     出芽酵母二倍体細胞での染色体レベルでの遺伝的変化における相同組換え機構の役割について、各種の相同組換え機構の欠損変異株を用いた詳細な解析を行った。その結果、相同組換え機構は染色体喪失、アレル間組換え、染色体異常などの発生を基本的には強く抑制する役割を果たすが、野生株での染色体レベルでの遺伝的変化の発生そのものには必須の働きをすることが明らかになった。また、それぞれの相同組換え経路は染色体レベルでの遺伝的変化の発生に異なる関与をすることも示した。さらに、これらのゲノム不安定性の原因が何らかの自然DNA傷害であることを示すとともに、相同組換え機構のバックアップ経路として複製後修復機構が働いていることを明らかにした。

  • Ajima, J., Umezu, K., and Maki, H. (2002). Elevated incidence of loss of heterozygosity (LOH) in an sgs1 mutant of Saccharomyces cerevisiae: roles of yeast RecQ helicase in suppression of aneuploidy, interchromosomal rearrangement, and the simultaneous incidence of both events during mitotic growth. Mutat Res., 504, 157-172. (PubMed12106656)

     出芽酵母のRecQヘリカーゼを欠損したsgs1変異株での自然染色体異常の体系的な解析を行った。その結果、sgs1変異株では野生株に対して顕著に自然染色体異常の発生頻度が上昇しており、特に異所性の相同組換えによる異常染色体の発生頻度と染色体喪失と相同染色体間組換えが同時に生じた細胞の出現頻度の大きな上昇が特徴的であった。

  • Umezu, K., Hiraoka, M., Mori, M., and Maki, H. (2002). Structural analysis of aberrant chromosomes that occur spontaneously in diploid Saccharomyces cerevisiae: retrotransposon Ty1 plays a crucial role in chromosomal rearrangements. Genetics ,160, 97-110. (PubMed11805048)

     出芽酵母二倍体細胞をモデルとして、真核生物での自然染色体異常の発生を初めて体系的に解析し、異常染色体のほとんどはゲノム中に散在するレトロトランスポゾンTy1の配列間での相同組換えに起因することを明らかにした。

  • Hiraoka, M., Watanabe, K., Umezu, K., and Maki, H. (2000). Spontaneous loss of heterozygosity in diploid Saccharomyces cerevisiae cells. Genetics,156, 1531-1548. (PubMed11102355 )
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